このページは長編小説『白いストラトキャスター』の第9話です。
※今回の長編小説は登場人物紹介やあらすじ等はありません。読まれていない方は第1話から読むことをオススメします。
第1話から読みたい方はこちらからどうぞ→第1話 無口な美少女
前回のお話はこちら→第8話 残っていたおしっこ
第1章 楓の好きな曲
僕「やべーーーーー!!まだあと1週間もあるじゃん!!俺もう楽しみ過ぎて寝れないんだけど笑」
待ち合わせ予定の1週間前、僕は待ちきれずに楓にLINEを送信してしまった。比較的空いていると言っていた火曜日の夜に合わせたつもりだが、今日のLINEが原因で、会う予定がさらに後ろ倒しになってしまう事だけは避けたい・・・。
僕(送ってしまった・・・久しぶりのLINEを・・・)
僕は送信したと同時に後悔してしまった。楓に3週間すら待ちきれないのかと思われるかもしれない。しばらく既読が付かないまま時間は流れたが、1時間くらいが経った23時頃にようやく返事が届いた。
ピコーーーーーン!!
僕「誰だ???楓か???」
家で一人だというのに、無意識に大きな声が出てしまった。急いでスマホの通知を確認すると、楓からこんなメッセージが入っていたのだった。
楓「ウチも初めてのギターが楽しみ過ぎて、勉強に集中出来ない笑」
内容はもちろんの事、LINEでもタメ口になっている事が本当に嬉しかった。初めての事ではなかったが、文末に”笑”も付いていて、とても明るい印象だった。
楓「もし良ければ、」
楓「今から10分、」
楓「電話しませんか?」
楓「頼みたいことがあるので。」
楓「しかし時間はないので、」
楓「絶対に10分以内。」
続いて楓お馴染みのLINE連発が繰り出されたので、僕は内容を確認しながら家の部屋の窓を閉め始めた。
僕「いつでもOK!!なんならこっちからかけようか?」
僕がそんな返事をして数秒後、すぐに楓から着信が入った。彼女からの着信なんて、数ヶ月前までなら絶対にあり得ないだろう。
僕「お電話ありがとうございます。お電話口は西口楓様でお間違いないでしょうか?笑」
楓「その設定は・・・なんや?」
僕「いや冷静www 今、家なの?」
楓「うん家。今さっきお風呂終わって、ドライヤーも終わったとこや。」
僕「細か過ぎる笑 んで、時間10分しかないんでしょ?頼みたい事って何?」
楓「うん。ウチな、ギターで弾けるようになりたい曲があんねん。」
僕「おおマジか!!なんて曲?」
楓「ELLEGAR◯ENってバンド知っとる?」
それは邦楽ロックをある程度知っている人なら、知らない人はいないくらい有名なバンドだった。
僕「おおエルレかっ!!知ってるよもちろん。クッソ有名やんけ!!笑」
楓「エルレのAlternative Plansがウチ、この世で一番好きな曲なんよ。」
僕「あーーー待って。ちょっと待って。確かアルバムの最後らへんにあるやつだよね?」
楓「よぉ知ってんな!!それや!!」
僕「いやその前にちょっと待って。意外にロック聴くんだな笑」
楓「ロックは好きやで。」
電話越しでも楓のテンションがやたら高いのが分かった。彼女がここまで嬉しそうに話している様子を聞くのは初めてだ。僕にはそれが可愛くて可愛くて、ついついニヤニヤしてしまう・・・。
僕「で、その曲を弾いてみたいって事?まだタブ譜とか見てないから分からんけど、聴いた感じそこまで難しくはないと思うけど・・・」
楓「タブ譜?ってなに?」
僕「あーーー。ギターとかベース専用の楽譜。今度会うときにそれも教えるわ!!笑」
楓「ホンマに?楽しみや!!」
僕「そんなに楽しみなん?笑」
楓「うん!!確認やけど、ホンマに左利き用のギターやねんな?」
僕「もちろん!!それは間違えないよ!!笑」
楓「それやったら、今度会う時にAlternative Plans弾いてみてや!!お手本見して欲しい!!」
僕「えぇ!!一週間で仕上げるの?笑」
楓「・・・厳しい?」
僕「いやまだ分からんけど、そんなに難しくないんだったら大丈夫だと思うけど・・・」
楓「出来る範囲で構わへんし!!」
僕「分かった!!任せとけっ!!笑」
楓「電話したんはそれが言いたかったんや。教える言うても、目標が明確にないとやりづらいやろ?」
僕「ごめん。教える過程まで考えてなかったわ笑 ただとりあえずギターを持っていくくらいしか考えてなくて・・・笑」
楓「なんやそれ笑」
楓は笑っていた。今まで暗い印象の多かった彼女だったが、心を開いてくれれば普通の明るい17歳の少女だった。
僕「そろそろ10分だよ。もう終わるから来週ね?あっでも週末はシフト被るんだっけ?」
楓「そやな。別ポジやけど時間は被る!!ほんで待ち合わせは21時でええの?」
僕「うん。21時で!!」
楓「・・・遅刻せんとってや笑」
僕「おいおいメチャメチャ俺をいじるやんけwww 今日の楓めっちゃテンション高いなwww」
楓「・・・そう?」
僕「それなら、楓も来週は漏らすなよ笑」
楓「最低や!!ホンマに最低っ!!笑」
僕「時間だねーー!!笑バイバーーイ!!笑」
10分になろうかというギリギリのところで僕は電話を切った。そしてすぐに話に出てきた曲の楽譜を、有料アプリで調べていた。
僕「まぁやっぱり、そんなに難しくはないな・・・」
僕はベッドから立ち上がり、部屋の隅にかけられているギターを手に取って、早速来週に備えてギターの練習を始めるのだった・・・。
第2章 家でも我慢する楓
楓「もうおるよ。」
僕「遅れるからもうちょっと待ってて!!」
楓「遅刻やん!!遅刻せぇへん言うてたのに!!」
1週間後の12月2日の21時。僕のスマホは楓の名前で通知を送っていた。本当は既に駅の駐輪場近くに来ていたが、僕は楓にこんな返事を送った。
僕「10分くらい遅れるから、今のうちにトイレ行っといれ!!笑」
これは人と会う前、ついついお水をたくさん飲んでしまう楓に対して、僕が出来る最大限の配慮だった。そろそろ彼女の尿意も限界に近づく頃だろう。ここで一旦膀胱をリセットすれば、僕の前で恥ずかしい思いをしなくて済むはずだ。
もちろんその後のトイレに向かう楓の行動を、遠くから一人で観察したい気持ちもなかったと言えば嘘になるが・・・笑
楓「お水はめっちゃ飲んでもたけど、」
楓「今度はちゃんと限界なる前に言うようにするから大丈夫や!!」
楓は僕の考えていることを汲み取ったのか、すぐにそんなLINEが返ってきた。安心した僕は道の角を曲がり、駅の駐輪場に自転車を停めて、待合室に向かった。
待合室が近づくと、窓から楓が中でベンチに座りながら足をブラブラさせ、スマホをいじっている様子が確認出来た。季節は完全に冬になっていて、モフモフの暖かそうなパーカーと、以前乃々華からプレゼントされたえんじ色のマフラーを首に巻いていた。
ガラガラガラ・・・
僕「やっっほーーー!!笑」
待合室に入り僕は扉を閉めた。さすがに夜も遅いので、大きな音を立てて楓を脅かそうとは思いもしなかった。
楓「ウチがこの前失敗したから・・・気ぃ遣ってくれたん?」
楓の第一声はこれだった。もうちょっと時間を置いたりすれば良かったが、早く楓に会いたい一心で、10分と言っていた遅刻から1分で来てしまったのは失敗だ笑
僕「ごめんごめん!!本当はもう来ていたんだけど、前みたいになったら楓に悪いなーと思って。ハハハ笑」
楓「まだ大丈夫やで。ありがとうな・・・。」
相変わらず黒いマスクをしていた楓だったが、目だけでも申し訳なさそうにしている様子が分かった。
楓「考えたらウチ、もう下腹部さんの前で何回も失敗しとるから、そん時の恥ずかしさと比べたら、限界になった事くらいちゃんと言えるわ。」
僕「いや、限界になる前に言えよ笑 今も本当は行きたいの?」
楓「トイレはもう行きたいで。そやけど普段から我慢しとるから大丈夫や。」
僕「別に隣の公衆トイレじゃなくてもいいんだよ?家近いんだし、家ですればいいのに・・・」
僕はまた気を遣ってそんなセリフを吐いたつもりだった。しかし楓の返事は、あまりに予想していないものだった。
楓「ウチ、家のトイレ使いたないねん。」
まさかそんな事を言うとは思いもしなかった。家のトイレを使いたくない人なんているのだろうか?家のトイレしか使いたくないならまだ分かるが・・・。
僕「えっどういう事?家のトイレしか使いたくないじゃなく?」
楓「ウチ、お母さんとおばあちゃんと3人で暮らしとる言うたやん?あのボロい家、お母さんの実家やなくて、おばあちゃんの実家なんよ。築80年の古い家やねんで。」
僕「すご。確かにかなり古いなとは思ったけど・・・」
楓「せやから、その・・・トイレが、汲み取り式なんよ・・・///」
僕「えっ!!この平成の時代にボットン!?」
大きな声で僕はそんな言葉を発してしまった。こんなに可愛い女子高生が、日常的にボットン便所で用を足しているなんて・・・。
楓「せやから毎日朝起きても学校まで我慢や。最悪、駅の公衆トイレやな。もちろん汚いけど水洗なだけマシやで。」
僕「エグすぎだろ・・・休日はどうしているの?」
楓「さすがに丸1日は我慢出来ひんよ笑 限界になったらしょうがなく使うけど、わざわざここの公衆トイレまで行く時もあんで。」
僕「凄い毎日を送ってんなw」
楓「でもお母さんにある日バレてな、「女の子は我慢したら膀胱炎なるからボットンでもトイレして」って言われるけどウチ、まだなった事ないんよ。」
僕「体質にもよるからねー。」
楓「もう慣れたわ。我慢にはある程度慣れてる言うたやん?そう言うことや。」
僕「だから今も、我慢してはいるけど大丈夫ってこと?」
楓はすぐに小さく頷き、そして立ち上がった。窓から公衆トイレの方向を見つめる彼女は、さらに話を続けた。
楓「あの公衆トイレを一番利用してんのはウチやと思う。元々トイレットペーパーも置いてへんかったから、ウチが家から何個か持ってきて置いてあるんよ。」
僕「公衆トイレから盗むじゃなく、提供するという逆パターンwww」
楓「たまにトイレットペーパー切れてたの忘れて、大変な時もあるで笑」
そんな話をしながら今度は僕の背中に近づき、楓は僕が背負っているギターケースを触り出した。
楓「・・・もうええ?笑 ギターしに来たのにトイレの話ばっかりや笑」
僕「ごめんごめん笑 でも前回とは別人みたいに堂々とトイレの話するんやねw」
楓「色々失敗も見られたし、逆にこれを話す事によって、会う前に水も飲まなくなるかもって・・・」
僕と楓は隣同士でベンチに座り、僕はギターケースを置いてファスナーを開いた。
楓「うわっ!!お兄ちゃんのギターと同じ形で同じ白色や!!」
僕「マジで?笑 そんな事ある?笑」
楓「偶然や!!一部違うとこもあるけど、ほとんど同じや。」
僕はギターを取り出し、足を組んでギターを抱えた。
僕「俺のは安物だけどね笑 エレキギターなら一番メジャーなタイプだよ。種類は”ストラトキャスター”!!」
楓「ストラトキャスター?」
僕「他にもレスポールとかテレキャスとかムスタングとかフライングVとか、エレキギターは結構種類多いよ。」
楓「ふーーーーーん。」
楓はジロジロと僕のギターを眺めていたが、僕はこの時大事なものを忘れている事に気が付いた。
僕「待ってヤバい・・・チューナー忘れた・・・。」
しばらくキョトンとしていた楓だったが、しばらくして僕にこう問いかけた。
楓「チューナーってチューニング合わせるん?」
僕「そう。忘れたからちょっと音がズレてるかもだけど、ごめんね?」
楓「貸して!!」
楓は僕のギターを手に取ろうと両手を伸ばしたので、僕は少しずつギターの重みを預ける形で楓にギターを渡した。
楓「思ったより重たい・・・」
僕「ハハハ!!重いよね確かに!!笑」
僕が笑っていると、楓は音程を調節するペグに手を伸ばした。
楓「ここを回して音程変えるんよね?」
僕「そうだけど・・・」
楓「音階教えて。ウチ、幼い頃からピアノやっとるから絶対音感あんで!!」
僕「えっ・・・すご・・・」
楓「6本の弦全部合わせるんやろ?」
僕「そう!!ついでに教えながらお願いするわ。この一番上の一番太い弦から6弦、5弦、4弦…って続いていく。」
楓「音階は?」
僕「音階は6弦からミ・ラ・レ・ソ・シ・ミに合わせて!!今は若干ズレてるくらいだから、そんな強くペグ回さないでよ!!笑 そっとそっと、ちょっとずつ動かさないと弦が切れちゃう笑」
楓「分かった。」
楓は少しずつ、言われた通りの音階にそれぞれの弦を合わせていった。
ジャラーーーーン!!
6本の弦の微調整を終えた後、僕が渡したピックを使って楓は一振りギターを奏でた。
僕「聞き慣れた音・・・チューニング合ってるわ。楓スゲェ・・・」
僕は感心した様子で楓にそう言ったが、対して楓の表情は曇っていた。彼女は静かに僕にギターを渡すと、小さな声でこう言ったのだった。
楓「結構トイレ、行きたなってきたかも・・・。」
〜つづく〜
次の話はこちら→第10話 楓の膀胱容量
前回の話はこちら→第8話 残っていたおしっこ
はじめから読みたい方はこちら→第1話 無口な美少女
オススメ
トイレに行かないと自称する某アイドルに、おしがまさせてみよう!!
僕のサイトでは珍しい途中で展開が分岐するタイプの小説です。しかし結構ウケ悪いので、もうやらないと思います(オススメなのかそれ?笑)。
尿計量が好みな僕でも、小説で尿計量するのって実は珍しいんですよ。

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