※このページは長編小説『排尿税』の第5話です。
第1話から読みたい方はこちら→ホームルームの粗相
前回の話はこちら→第4話 個室の中から
登場人物紹介
第1章 モノマネ
真冬「おはよう秋菜!! 今日もギリギリだなっ!!」
秋菜「おはよーーっ!!」
6月も中旬になり、新しいクラスにもかなり慣れてきた頃だった。関東では梅雨に入り、この日もあいにくの雨が降っている。
秋菜「何してるの?英語のヤツ?」
真冬「そうだ!! もう時間がねーんだっ!! だって提出期限は1限目だろ?」
真冬はホームルーム前に珍しく机上にノートを広げ、何やら英文を書き写しているようだった。
秋菜「誰からノートを借りてるの?」
真冬「アイツだよっ!! アイツっ!!」
真冬は教室の最前に座る心春の席を、行儀悪く顎で指した。
秋菜「やっぱり心春ちゃんと仲良いんだね!! だってノートの貸し借りをするくらいなんでしょ?」
真冬「仲良くねーよっ!! さっきまで秋菜も居なかったし、夏海ちゃんもまだ来てないだろ?だからしょーがなくアイツに・・・。」
秋菜「えっホントだ!! 夏海まだ来てないじゃん!!」
真冬「今頃気付いたのかよ。」
秋菜は最前列の夏海の席を見て驚いていた。いつもなら早めに学校に来ているはずが、今日は珍しく空席だ。
秋菜「もうホームルーム始まっちゃうじゃん!! 夏海が休むなんて珍しいよっ!! どうしたんだろう?」
真冬「連絡してみたらどうだ?」
そんなやり取りをしている秋菜と真冬の側へ、1人の女の子が近づいてきた。
心春「随分ゆっくりと書き写しているじゃない。そろそろノートを返してもらえないかしら鶴見さん?」
真冬「うっうるせーーーっ!! まだ終わってねーんだ!! あっち行けよっ!!」
心春「人が親切にノートを貸してあげているのにその態度は何なの?もうホームルームも始まっちゃうから返してちょうだい!!」
真冬「うーーーーっ!! もうちょっとなんだ!! もうちょっとだけ借りててもいいだろっ?」
心春「うるさいわねっ!! 貸す時にホームルームの時間までと言ったでしょう?」
真冬「だからそのホームルームの時間がまだじゃねーかっ!!」
心春「いい加減にしなさいっ!! 今返さないと、戸塚さんにあの事・・・言うわよ?」
心春は秋菜の顔を伺いながら、ちょっとだけイタズラな笑みを浮かべていた。これには秋菜も不思議そうに首を傾げる。
真冬「わっ、わ、わ、分かった返すよっ!! ほらっ!! あっありがとなっ!!」
心春「本当に態度が気に入らないわね。アナタ男にモテないわよ?」
真冬「うっうるせーーーっ!! 関係ねーだろそんな事!!///」
書き写すノートがなくなってしまった真冬は、今度は秋菜をねだるような目で見てきた。
秋菜「私のノート借りる?」
真冬「いっ・・・いいのか?」
秋菜「いいよっ!!」
秋菜はバッグから英語のノートを取り出し、それを真冬に渡した。
真冬「ほっ本当にありがとなっ!! どっかのデカい女とは違って、秋菜は本当に優しいぜっ!! ハハッ!!」
真冬はわざと心春にも聞こえるように大きな声でそう言った。心春は自分の席に座ろうとしていた頃だったが、彼女はまた来た道を戻って真冬の席へと近づいて来る・・・。
秋菜「ところで、さっき心春ちゃんが言ってたあの事って・・・何?」
真冬「なっ、なんでもねーよっ!! 秋菜はそんな事気にしなくていーんだ!! なっ?なっ?」
秋菜「そ、そうなの?」
秋菜は正直、心春の言っていたことが気になっていて、心の中のモヤモヤが徐々に大きくなっていくような気がした。
心春「教えてあげるわ戸塚さん。鶴見さんはね・・・。」
真冬「おっおいっ!! 約束破っちゃダメだろ!! ちゃんとノート返したのにっ!!」
心春「うるさいわねっ!! アンタ、私にワザと聞こえるように大きな声で嫌味を言ったでしょ?身長だけじゃなくて器も小さいのね?」
真冬「そんな事を言っただけで突っかかってくるお前も器がちっせーじゃねーかっ!! デカいクセにっ!!」
心春「言ったわね?もう引き返せないわ。悪いけど戸塚さん。ちょっと耳を貸してくれないかしら?」
秋菜「いっいいけど・・・?」
真冬「うわぁーーーー!!」
真冬が必死に心春を止めようとしていた、その時だった・・・。
ガラガラガラッ!!
先生「ホームルームを始めるぞー。全員席に着けー。」
担任が教室へと入ってきた。それと同時に鐘も鳴り出し、クラスメイトはそれぞれの席へと着席する。珍しく夏海の席は空いたままだった。
先生「まずは出席から始めるぞー。1番の旭!!」
シーーーーーーーーーン・・・。
クラスメイトのほとんどは、空席になっている最前列の夏海の席を見ていた。
先生「旭は欠席か?連絡も来ていないぞ。珍しいな。」
そう言って先生は出席簿の夏海の欄に「欠」という字を書いている様子だった。しかしその瞬間、何やら廊下側から大きな足音が聞こえてきた。
ダッダッダッダ!!
その足音は次第に大きくなり、次の瞬間、勢いよく教室の扉が開いたのだった。
夏海「セーーーーーーーーーーーフッ!!」
教室は一気に静まり返った。彼女は両手を翼のように広げ、膝をついたままセーフティポーズを取って固まっている。
先生「・・・セーフじゃないぞ。ギリギリ遅刻だ旭。」
夏海「えっ・・・マジですか?笑」
それは先生の反応も含めて、新学期間もない頃に真冬が遅刻した時とそっくりなくだりだった。
先生「・・・少し前にも、鶴見がそんな感じの事をしてなかったか?高校生の間で流行っているのか?」
夏海「いや思いつきです。どうせならみんなを笑わせたくて・・・笑 あの・・・寝坊しました!!笑」
クラス「ハハハハハハッッ!!」
教室は爆笑の渦に囲まれていた。普段そんな事をしないような夏海だからこそ、クラスのウケが良かったのだろう。これには幼馴染である秋菜ですらも驚くほどだ。
夏海「すいません・・・///」
夏海はあの時の真冬のように、舌を出して“やっちゃったー”という表情を浮かべながら、頬を少し赤く染めて席に着くのだった・・・。
第2章 朝のスキップ
真冬「なぁ秋菜。夏海ちゃんってもしかして、おしっこ・・・我慢してねーか?」
それは1限目の英語の授業中の事だった。必死に板書をしている隣の席の秋菜の肩を、真冬はペンで突っつきながら小声でそう言った。
秋菜「・・・確かにっ!!」
最後列である秋菜と真冬は、最前列に座る夏海の様子がよく見えた。彼女は体勢が落ち着かず、しきりに体を動かしている。
秋菜は最後列という席をいい事に、バレないように机の中に入れていたスマホを取り出した。そして夏海にメッセージを送ってみる。
秋菜(もしかして今、トイレ行きたいの?)
秋菜と違って夏海の席は最前列だが、彼女は秋菜のメッセージにすぐ既読を付けた。
夏海(バレてるの?恥ずかしい・・・笑)
秋菜(バレてるよっ!! だって動きが激しいんだもんっ!!笑)
すぐに既読を付けた夏海は、振り返って秋菜の方を見た。距離は少し遠いが、彼女の頬がちょっとだけ赤くなっている気がする。
真冬「どうだったんだ?やっぱり我慢しているのか?」
秋菜「やっぱりそうみたい!! 凄いね真冬ちゃん!! すぐに見抜けたんだねっ!!」
夏海は前を向き直し、モジモジしながらスマホをいじっているように見えた。そしてすぐに彼女から返事が届く。
夏海(朝のトイレ行き忘れちゃった。寝坊して急いでたからつい・・・。)
秋菜(大変じゃん!! 朝のトイレをしないまま学校だなんて考えられないよっ!! 本当に大丈夫?)
夏海(・・・結構ヤバいかも笑)
秋菜(今日の夏海って本当に珍しいよね?遅刻も初めて見たし、トイレを我慢しているのも初めて見るかも?)
2人でそんなやり取りをしていると、英語の担当教諭である女性の先生が不思議そうに夏海を見ていた。
先生「旭さん?何をしているの?」
夏海「なっ、なんでもないですっ!!」
隠すように持っていたスマホを、夏海は危うく落としそうにしていた。彼女は慌てた様子で机の中にそっとスマホを置き、秋菜のメッセージに既読だけ付け、返事が出来ない様子だった。
秋菜「さすがに注意されたからか、返事が来ないよー。」
教科書を立ててスマホをいじる秋菜の手を突っついて、真冬は小声でこんな事を言い出した。
真冬「なぁ秋菜!! ウチにちょっとだけスマホを貸してくんねーか?夏海ちゃんに言いたいことがあるんだっ!!」
秋菜「言いたい事・・・?別にいいよっ!!」
秋菜は小声で明るく返事をして、真冬にそっとスマホを渡した。
真冬「ありがとなっ!!」
すると真冬はニヤニヤしながら長い文章を打ち込み、そしてそれを夏海に送った。
真冬「サンキュー!!」
真冬は夏海へメッセージを送ると、すぐにスマホを秋菜に返してきた。
秋菜「えっもういいの?」
真冬「おうよっ!!」
しばらく夏海はスマホを見ていなかったが、先生の隙を見て真冬からのメッセージを読んでいた。そしてその後、彼女は困ったような表情を浮かべながら再度、秋菜の席の方へと振り返るのだった。
秋菜「夏海になんて言ったの?」
真冬「多分、今に分かるぜっ!!」
真冬は目を輝かせながら腕を組んでその時を待っていた。そしてしばらくすると、夏海は急に手を挙げて立ち上がるのだった。
夏海「せ、先生!! あの、その・・・///」
突然の出来事に、先生はもちろんクラスメイトのほとんどが驚いていた。
夏海「お、おしっこに・・・行きたいです///」
この場にいる人間のほとんどは、まさか夏海の口から“おしっこ”という単語が出るとは思いもしなかっただろう。夏海の顔はこれでもかという程に真っ赤だ。
先生「いいけど、トイレはなるべく休み時間に行くようにしてください。それと、女の子なんだからお手洗いと言ってください!!」
夏海「はっはい!! お手洗いに行きたいです!! もちろん我慢したいのは山々ですが、朝のおしっこをスキップしてしまい、実に漏れそうでございますっ!!笑」
スカート越しに股間を押さえながら、夏海はモジモジと激しい動きをしていた。
クスクスクス・・・。
教室内の笑い声も大きくなってきていた。先生はやれやれといった様子で、フーーーッ!! と大きくため息を吐く。
先生「もう!! 女の子なのにはしたないっ!! 急いで行ってきなさい!!」
夏海「ごめんなさーーーーい!!」
クラス「ハハハハハッッ!!」
股間を押さえたまま、夏海は小走りで教室を出て行った。再び教室内は大爆笑の声に包まれる。
秋菜「この前の真冬ちゃんのモノマネじゃん!!笑 ホームルームの時も上手かったのにっ!!笑」
真冬「だろ?お願いしたらちゃんとやってくれたぞ。夏海ちゃん意外とチョロいかもしれないなっ!!笑」
英語の先生は、呆れた表情になりながらも授業を再開していた。するとそこから数分後、夏海が勢いよく教室の扉を開いて戻ってきたのだった。
夏海「先生!! 信じられない量が出ましたーーー!! 滝のように出ました/// 本当に気持ち良かったです///」
クラス「ハハハハハッッ!!」
真冬の時とは違い、夏海は顔が真っ赤っかだ。
先生「この前も鶴見さんが同じ事言ってなかったっけ?それ、高校生の間で流行ってるの?」
夏海「あーもう恥ずかしい/// 先生も何も訊かないでくださいよ///」
顔を真っ赤にしながら、夏海は勢いよく机に突っ伏した。その様子を見て、クラスメイトのみんなはさらに笑いに包まれる。
秋菜「夏海はノリが良いから、頼んだらそういう事も意外とやってくれるんだよ!!」
真冬「さすが幼馴染だなっ!! そういう事もやっぱり知ってるのかっ!!」
秋菜「うん!! でも・・・。」
真冬「でも・・・?」
感心する真冬の隣で、秋菜は少しニヤついた表情に変わった。秋菜のこんな顔を見るのは、真冬にとっては初めての事だった。
秋菜「でもね、夏海はやられたら絶対にやり返す性格なの。真冬ちゃんは今後、覚悟してた方がいいかもよ?笑」
真冬「こ、こえーーー・・・。」
真冬は思わず背筋をピーンと立てて、しばらく固まってしまうのだった・・・。
〜つづく〜
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