このページは長編小説『白いストラトキャスター』の第11話です。
※今回の長編小説は登場人物紹介やあらすじ等はありません。読まれていない方は第1話から読むことをオススメします。
第1話から読みたい方はこちらからどうぞ→第1話 無口な美少女
前回のお話はこちら→第10話 楓の膀胱容量
第1章 我慢や我慢!!
あれから少しだけ月日は流れ、年が明けた。僕は楓に新年の挨拶をしようとスマホをいじり始める。LINE履歴から楓を探し出してトーク画面に行こうとすると、彼女のLINEプロフィールが少し変わっている事に気が付いた。
元々楓のアイコンはなんでもないような綺麗な海の景色を少し編集したような画像を使っていたのだが、そのアイコンをそのままに、設定していなかったプロフィールの一言だけが追加されていたのだった。
そしてその一言を読んで僕は興奮を覚えてしまった。何故なら一言にはこう書かれていたからだった。
「我慢や我慢!!」
それだけが書かれている彼女のプロフを見て僕は固まってしまった。前回会った時に話していた、“もっとおしっこを我慢出来るようになれば精神的に楽”という話を実行している最中に、この一言を設定したのではないだろうか?
あれだけ可愛い女子高生が、普段から尿意を我慢するように意識を向けていると考えるだけで興奮が収まらない。そして変に意識が高い楓なら、そのためにプロフを変更するのも納得出来る話だった。
僕「楓!!ハッピーニューイヤーーー!!今年もよろしくね!!笑」
そんな事を考えながら、僕は年明け初めてのLINEを送信した。時間はまだ深夜0時を少し過ぎたところだ。普通の10代なら年末年始ということもあり、まだ起きている場合が多いだろう。しかし楓からの返事は一向になく、朝の6時過ぎになってようやく返事が届いたのだった。
楓「ごめんな。寝てたわ。あけおめや!!笑」
楓はどんな日だって早起きだった。恐らく毎日早朝から勉強を長時間頑張っているのだろう。彼女の進路も気になるところだったが、その前にやはりプロフィールの一言がどうしても気になった。
僕「今日も朝早いなw ところで楓のそのLINEの一言、さすがにヤバ過ぎなw」
僕が起きたのは朝10時を過ぎたところだった。かなりの時間差返信だったので、楓からの返事も遅いだろうと考えていたが、予想に反して返事はそこから数分程度だったので驚いた。
楓「一言?何が?」
はじめはとぼけたふりをしているのだろうか?と思っていたが、僕が説明不足なのだと思い、謝った。
僕「ごめんごめん!! LINEの一言だよ!!笑 “我慢や我慢!!”ってトイレのことでしょ?そんな意識しなくてもwww」
しかしすぐに届いた楓の返事を読んで、僕は急に恥ずかしくなった。
楓「ちゃうちゃう!!笑」
楓「我慢ってトイレのことやなくて前髪や前髪!!笑」
楓「変な勘違いしんとってや笑」
勘違いなのは事実だが、本当に紛らわしい事をするもんだ笑
僕「前髪?トイレじゃなくて?笑」
楓「そうやで笑」
楓「今、前髪が目にかかる一番中途半端な長さなんよ。」
楓「イライラするけど切りたないし、」
楓「今が一番我慢せなアカンから・・・。」
僕「いやいや、紛らわしい事すんなよw 俺、てっきり日常的にトイレを我慢しているのかと思ったわwww」
楓「思考が変態やん!!」
僕「ごめんって笑」
楓「せやけど日常的にトイレ我慢してんのもホンマやで?笑」
僕「今は?」
楓「今もホンマはちょっと行きたいねんけど笑」
僕「早速じゃねーか!!笑」
楓「だって家のトイレ使いたないから。」
僕「昨日からずっと家に居たの?」
楓「うん。」
僕「トイレはどうしてた?」
楓「昨日の夜は家のトイレつこうたけど、」
楓「朝はいつもの公衆トイレまで歩いたわ笑」
僕「新年一発目の排泄はあのトイレか笑」
楓「排泄って言いんとってや、恥ずかしいで!!」
僕「楓はもう何度も、今より恥ずかしい事たくさん言ってるけどね?笑」
楓「やかましいわ笑」
新年早々とんでもない会話をしていた2人だったが、キリのいいところで5日後にまたギターを教える予定の確認でもしようと僕は考えていた。
僕「今日も勉強ばかりなんでしょ?」
楓「うん。今休憩しとったからまた勉強始めるわ。」
僕「今度会うの6日だけど忘れてないよね?笑」
楓「もちろんや!!せやけど最近、Y◯utube見てちょっとギター学んだんよ。」
僕「俺の存在価値は?www」
楓「だってギターだけ借りたって何も出来ひんもん!!笑」
僕「それもそうだな笑 1ヶ月空いたもんなー笑」
楓「6日楽しみにしとるよ?」
僕「いや、楽しみなのはこっちの方だ笑」
楓「ぼちぼち時間やから、また今度な!!」
僕「”ぼちぼち使う人、初めて見た!!さすが大阪!!笑」
こうして元日のおけおめLINEは終わりを告げた。楓が明るく対応してくれるだけで僕は本当に十分だった。こんなに明るい彼女を知る人は、バイト先では僕と乃々華くらいなのかもしれない・・・。
第2章 楓の部屋
それから数日後。日付は1月6日になり、夜も近づいてきた。待ちに待った楓と会う約束が目の前に来ている。僕はルンルン気分で家の家事をこなしていた。
ピコーーーーーン!!
すると突然、僕のスマホが鳴った。誰だろうと思い確認すると、なんと楓だった。
楓「場所変えなアカンわ。」
その一言の後、楓から1枚の画像が送られてきた。それは無断で駅の待合室を長時間使用しているという苦情が入ったとの張り紙が、いつもの待合室の入り口に貼られている写真だった。
僕「あーーーーー。これは間違いなく俺達の事やねw」
楓「さすがにアカンかったか。」
僕「それなら公園とかにする?」
楓「ここらへんホンマに公園も何もないで?」
僕「そうなんだよなー」
楓「それに今の時期は寒いし・・・」
僕はどうしようかと悩んでいた。さすがに僕の家に楓を呼ぶ勇気はないし、彼女もそれはさすがに嫌がるだろう。しかも2人はまともな交通手段がないのだ。公共交通機関は貧弱で、おまけに楓は自転車すらもない。しかしそんな時、楓の提案に驚いたのは言うまでもない。
楓「しゃあないから今回だけ・・・」
楓「ウチの部屋でせぇへん?」
まさかとは思ったが、楓は本当にいいのだろうか?こんなに可愛い女子高生の部屋に入れるとは・・・僕は前世によっぽどの徳を積んだのかもしれない笑
僕「いいの?俺は全然いいけどさ笑」
楓「ウチもええけど、ホンマに家ボロいで?」
僕「トイレがボットン便所なんだからそりゃそうだろw」
楓「ホンマにいっつも余計な事言うわ笑」
僕「21時に楓の家行っていいの?家の人は?」
楓「21時で大丈夫や!!お母さんはいつものように夜勤やからそれも大丈夫!!おばあちゃんは何とかするわ笑」
僕「何とかってなんだよw」
楓「何とかする笑 自転車は駅の駐輪場に置いてきて欲しい!!」
そんなやりとりをした事もあり、その日の夜は楓の家に21時に待ち合わせをすることになった・・・。
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僕「着いたよ!!」
その日の夜。21時より少し早いくらいだったが、僕は楓にメッセージを送った。すると返事はすぐに来た。
楓「思ったよりも早いな。」
楓「ちょう待ってな。」
その返事を読んで僕はしばらく待っていたが、楓は一向に家から出てこなかった。そして5分くらいが経った頃だろう。またもや楓からLINEが届いた。
楓「アカンわ。おばあちゃんが全然寝てくれへん笑」
そんな事だろうとは思っていたが、しかしここからどうすればいいのだろうか?そんな事を考えながら楓のメッセージを読んでいた時、彼女はいつの間にか僕の前に現れていた。
楓「遅なってごめんな。」
僕「うわぁ!!!!」
いつも僕が楓を脅かしていたツケが帰ってきた笑 もちろん楓本人は意図的ではなかったと思うが・・・笑
楓「しーーーーーー!!おばあちゃんにバレてまうやろ!!笑」
なんと楓はマスクをしていなかった。家だからそれは当たり前なんだろうが、可愛い過ぎる顔が見たくて僕は仕方がなかった。暗くてよく見えないのが本当にもどかしい・・・。
楓は裏口から僕を家に案内した。恐らく祖母にバレないようにする為だろう。案内された部屋は母屋とは離れになっている小さな建物だった。
僕「離れなんだ・・・」
楓「そうやで。せやからおばあちゃんにバレにくい言うメリットがあんねんで笑」
僕「だったらおばあさん寝なくても大丈夫じゃん!!笑」
楓「せやけど、寝てた方がええやろ?」
僕は楓のジェスチャーに従うままに、古い6畳部屋に案内された。そこは少しカビ臭いような、古めかしい匂いのする趣のある和室だった。暖房はなかったが、電気ストーブとホットカーペットが暖かいので十分だ。
楓「しばらくここで待っとって!!」
そう言ってサーーーーッッッと勢いよく部屋の襖を閉めた楓。物は多かったが、綺麗に整理整頓がされていた。見慣れたバイト先の制服や東高校の制服とジャージ、いつも使っている高校のバッグ、そして楓が毎日そこで寝ているのであろう、黒いふかふかのベッドもあった。
僕(絶対に楓の部屋だ・・・。)
僕は今、楓の部屋にいるのだと確信した。そう考えると少しだけいい匂いがするような気が・・・しないでもない笑 そしてベッドの反対側には、黒色のアップライト型のピアノも置かれていた。そして・・・
僕(俺のギターだ・・・。)
僕の白いストラトキャスターが、ピアノの隣にちょこんと置かれていた。さらにその隣には、多少散らかっている机があり、いわゆる“赤本”などの参考書も何冊か見えた・・・。
僕「えっ、楓って◯◯大目指してんの・・・?」
赤本の表紙には、誰もが知る超有名大学の名前が書かれていた。恐らく楓が目指している大学なのだろう。驚いた僕はついつい声が出てしまった。
彼女の部屋に入る事で、“西口 楓”という人物をまた少し知れた気がした。頭がいい事はもちろん知っていたが、まさか◯◯大を目指せるほどとは全く思っていなかった。
楓「ごめんな遅なって!!」
楓は僕のためにお茶とお菓子を持ってきた。彼女はなんていい子なのだろう・・・笑 明るい部屋になって今日初めて見るノーマスクの楓。本当に尋常じゃないほど顔が可愛い。何故僕は、そんな彼女の部屋に来れたのだろう?笑
楓「下腹部さんアカンッッ!!伏せて!!アカンわ///」
しかしその瞬間、楓は急に大きな声を上げた。むしろ彼女がおばあさんを起こしてしまうだろうと、ツッコミたくもなった笑
僕「えっ?」
楓「ええから///アカンわホンマに・・・!!」
僕は言われるがまま伏せるような態勢になった。まるで犬みたいだ笑
楓「目隠ししてや!!ウチが合図するまで目ぇ開けたらアカンで?」
僕「う・・・うん・・・?」
楓は何かジャラジャラと音を立てていた。一体何をしているのだろう?
楓「ごめんな。もう大丈夫や・・・」
襖の音が聞こえて一瞬、楓は部屋を出たような気がする。僕は不思議そうに彼女を見つめていると、楓はこれでもかと言うほど顔を真っ赤にしていた。
楓「み、見てへん///・・・よね?///」
僕は終始不思議そうな顔をしていたが、大体察しがついた。
楓「し、下着・・・干したままやった・・・///もし見てたんやったら、その・・・き、記憶を、消して欲しいっ///」
僕「いやいや無理だろwww」
なんて無茶な事を言うのだろうと思ったが、それも含めて楓が本当に可愛いかった。
僕「見てないよ笑 ガチで気がつかんかったわw」
楓「ホンマに?」
僕「でも楓って詰めが甘いよねー笑」
楓「うっさいなぁ///」
そんなバタバタしたスタートだったが、21時半になる頃にやっと楓はギターを手に取った・・・。
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僕「・・・どうよ?タブ譜って簡単でしょ?」
楓「ホンマやな。六線譜なのが違和感凄いけど、全然読めるで。」
僕「ピアノやってるから吸収が早くて助かるー笑」
そうやって練習も一旦キリがついたと思った頃だった。楓は持っていたギターをベッドの上に置き、膝立ちのまま足の付け根部分に両手を持っていき、拳をギュッと強く握り締めていた。
僕「もしかしてトイレ行きたいの?」
僕の問いかけに、楓は小さく頷いた。
楓「でも、さっきからおばあちゃんが・・・」
楓は以前、待合室で漏らした時のような困った表情をしていた。窓の外をじっと見つめていて、その視線の先に離れの汲み取り式トイレがあるのだろうと僕は考えていた。
僕「どうしたの?」
楓「ずっとおばあちゃんが入っとって、どないしよか・・・」
僕「空くまで待てないの?」
楓「もう10分以上経ってるで?お腹壊しとるんかな・・・?」
トイレをよく見ると、確かに電気が点いていた。
楓「でも・・・丁度ええな。」
しかし、楓は思っていたより冷静だった。何が丁度いいと言うのだろうか?
楓「ごめんやけど、また待っとってくれへん?」
僕「別にいいけど?」
楓はまた勢いよく襖を開けて部屋を出ていき、離れを去っていった。窓の位置的にその後の楓の様子が見えなかった事もあり、何を企んでいるのかが全く分からなかった。
僕「ふぅ・・・。」
僕はまた楓の部屋で1人になった。今度は立ち上がって部屋を隅々まで見渡してみる。すると机の上の端っこに、幼い男女が写っている小さいサイズの写真が立てられていた。その写真の右に立っている7歳くらいの女の子を見て、僕はすぐにそれが誰か分かった。
僕「楓の、幼少期だ・・・・!!」
それは2人とも幸せそうにしている写真だった。左にいる恐らく兄であろう人から頭を撫でられて、幼い楓は前歯の乳歯が抜けた状態で、満面な笑みを浮かべていた。
僕は楓の笑顔を知る数少ない人物だと思っていたが、この笑顔を見て自分が自惚れていた事を自覚した。それはここまで幸せそうな楓を、僕はまだ見たことがなかったからだ。
僕「お兄さんクソかっけぇ・・・遺伝子の暴力じゃんw」
そして幼い頃から完璧と言えるほど顔が整っていた楓だったが、隣にいるお兄さんも本当にカッコ良かった。恐らく彼は中学入学くらいの年齢だろうが、2人は性別を入れ替えただけで顔はほとんど瓜二つだ。
サーーーーーーーーッッ!!
そんな時、気配もないまま襖の開く音が聞こえてきた。僕が振り返ると、そこにいたのは楓ではなく、70代くらいのばあちゃんだった。
おばあさん「楓の・・・彼氏さん・・・?」
僕はその瞬間、額からジワーーーーーっと汗が滲んできた・・・。
〜つづく〜
次の話はこちら→第12話 青い一冊のノート
前回の話はこちら→第10話 楓の膀胱容量
はじめから読みたい方はこちら→第1話 無口な美少女
オススメ
宮崎県が舞台。今までの妄想小説の中で一番実物を参考にした話で、目的地までの路線や所要時間、実在するレストランなどを細かく再現しています。
北海道が舞台。北海道に来て僕も5年ほどが経ちますが、とにかく道民達のマウントがうるさいので、気晴らしにそのマウントを活かして小説にした作品w ちなみに北海道民3大マウントは気温、雪、距離の3点。異論は認めないw

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