このページは長編小説『白いストラトキャスター』の第7話です。
※今回の長編小説は登場人物紹介やあらすじ等はありません。読まれていない方は第1話から読むことをオススメします。
第1話から読みたい方はこちらからどうぞ→第1話 無口な美少女
前回のお話はこちら→第6話 口を滑らせた乃々華
第1章 会話のキャッチーボール
僕「最後に話してくれてありがとう!!俺、めちゃ嬉しいよ!!」
楓「はい・・・。」
楓はやっと僕に話しかけてくれたが、ここまで持ってくるのに相当な時間を費やした。彼女は何故ここまで人と会話が出来ないのだろうか?僕の中でそんな疑問がどんどんと大きくなっていく・・・。
僕「俺さ、ずっと西口ちゃんと話がしてみたかったんだよ!!LINEじゃなくて直接ね!!」
楓「・・・・・・はい。」
僕「もし良かったらさ、今からちょっと時間ある?待合室でちょっと話さない?」
僕はポツンと佇む、誰もいない電気が点いているだけの待合室を指さした。
楓「・・・・・・勉強せんといけんかって。」
僕「・・・そうか」
楓は大きく頷く。また2人に長い沈黙が続いた・・・。
僕「・・・それならさ、今度ここでまた待ち合わせしようよ。30分・・・いや15分でいいからさ!!空いてる日っていつがある?」
僕の問いかけに楓はしばらく考えた後、スマホを取り出してメモアプリを開いた。はじめはそこにスケジュールを入れているのかと思っていたが、彼女はまたスマホを使って筆談に入ったのだった。
「来週だけはちょっと厳しいですが、基本的に火曜日の夜なら空いてます。」
こう書かれたスマホの画面を僕に見せてきた。やはりまだ面と向かって僕にしっかりと話す事が出来ないのだろう。彼女とまともに会話が出来るようになりたいと考えてはいたが、それはもちろんゆっくりで構わない。
僕「それなら11日でどう?再来週の火曜日!!」
楓は頷いた後、またスマホに文章を入力して僕に見せてきた。
「電話じゃダメなんですか?ここまで来させるのは、流石に悪いです。」
僕「電話でもいいんだけどさ、はじめは楓ちゃんと直接話したいな。もちろん無理にとは言わないけど!!笑」
僕は無意識に彼女を名前で呼んでしまっていた。それに気付いた瞬間恥ずかしくなり、彼女から背を向けてしまった。
僕「ごめんごめん勝手に名前で呼んじゃって!!笑 西口ちゃんがいいならいいよ!!笑」
笑いながらもテンパっている僕を見て、楓はキョトンとしながら今度は声を出した。
楓「名前でいいです・・・西口って名字、ウチ嫌いです・・・」
僕「えっそうなの?」
今度は声こそ出さなかったものの、無言で首を縦に振って楓は返事をした。
僕「それならさ、11日の21時にここに集合でいい?楓ちゃん?笑」
楓「・・・はい。楓でいいです。ちゃん要らないです・・・。」
僕「おーーマジか!!それならむしろ喜んで呼び捨てにするわ!!笑 ちなみに時間制限とかあるの?笑」
楓「それは、そん時に考えます・・・。」
僕「分かった!!楽しみにしてるよ楓!!笑」
僕はガシャンと音を立てて自転車のスタンドを蹴り、そしてサドルに跨った。
僕「それなら・・・今度こそバイバイ!!」
楓「・・・・・・。」
楓は無言のまま手を上げて、小さく手を振った。早く再来週の火曜日にならないかと思いながら、雨が上がったばかりのまだ濡れているアスファルトの田舎道を、力一杯に漕いで家に向かうのだった・・・。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
僕「お疲れ!!そろそろ時間だけど、もう着いちゃった!!笑 まだ家?」
待ちに待った11月11日火曜日の夜。予定よりも早く、時間になる10分前に楓の最寄駅に着いてしまった。冷え込んだ真っ暗な無人駅を見つめた後、僕は楓にLINEを送る。
楓「もういます。」
すると5秒ほどで返事が来た。しかももう着いているらしい。ポツンと佇む待合室には電気が点いていたが、人がいなくても夜になると自動的に点灯するタイプだ。きっとこの中には楓がいるのだろう。
僕は待合室の窓を覗いてみた。すると楓はベンチのすぐ側にスマホを置いたまま、いつものようにジャージ姿で黒いキャップとマスクをしたまま、単語帳を広げている姿が目に入った。それに僕には全く気が付いていない様子だ。
僕「やっほーーー!!楓!!笑」
楓「うわっっっ!!」
僕はいきなり大きな音を立てて待合室のドアを開けると、前回と同様に楓は驚いた。
僕「ハハハハッッ!!笑 いつも驚き過ぎなんだってw」
楓「・・・・・・。」
楓は僕を睨みつけた。表情から読み取るに、「脅かさないでください」と言っているようだった。
僕「ごめんねいつも脅かしてばっかで!!笑 」
楓は小さく頷いた。まだ簡単な会話しか出来ないだろうが、僕にとっては会話のキャッチボールさえ出来るのなら、スマホを使った会話だろうが、とにかくなんでも良かった。
僕「こんな事訊いたら怒るかもしれないけどさ・・・楓ってなんでこんなに無口なの?過去に何かあった?」
楓は固まったままだったが、しばらくしてまた小さく頷き、そして小さな声で口を開いた。
楓「あの・・・、この話、したくないです。話変えて欲しいです・・・」
やはりこの話はダメなのかと思った。しかし楓はスマホを一切使わず、僕に対して口でしっかり話そうとしているのが伝わった。僕はそれが本当に嬉しかった。
僕「ごめんごめん!! いや、もちろんそれ以外にも話したい事たくさんあるんだよ!! ありすぎてどこから話していいかが分からなくて・・・ハハハ笑」
僕は話したかった沢山の話題から「楓が無口」という関連の話を頭の中でどんどん削ぎ落としていった・・・。しかしそんな事を考えていると、別の話を切り出したのは楓の方だった。
楓「後日LINEするってウチから言うたんに、ずっと出来なくてごめんなさい。」
僕「いやいや全然いいよ!!笑 そんな気にしてくれてこっちも申し訳ないわ!!笑」
楓「下腹部さんとはトイレのトラブル多いので・・・恥ずかしゅうてでけへんかった・・・。」
僕「ハハハハッッッ!!」
あまりにもコテコテな楓の関西弁に、僕は不覚にも笑ってしまった。そんな僕の様子に、彼女は急にどうしたのかというような顔をして驚いていた。
僕「店長よりもコテコテじゃんwww 確か店長も大阪出身だったよね?」
楓「そうです・・・。」
僕「いや待って楓!!俺に敬語禁止!!笑 もっと関西弁で喋ってよ!!笑 関西弁だったら「そうやで」・・・になるの?笑」
楓「・・・そうやで。」
僕「いやーーーー関西弁可愛くていいわーーー!!俺の周りの人、関西弁話すのが店長と楓しかいないからマジで新鮮!!しかも店長は20年以上九州にいるらしいから、結構九州弁と混ざったりしてるし!!笑 ねっ?笑」
楓「・・・・・・。」
僕「もう俺のことも呼び捨てでいいしタメ口でいいよ!!」
楓「それは、無理です・・・」
僕「ほらほら敬語になってるって!!敬語だとしっかりとした関西弁聞けないじゃん!!笑」
楓「・・・すいません。それやったら、少しずつ直していきます・・・。」
明るくはなかったが、楓は以前とは比べ物にならないほど僕と会話が出来ていた。僕にはそれが本当に嬉しかったが、彼女はこのあたりから、またまたあの生理現象が始まっているようにも見えた・・・。
第2章 頻尿の原因
僕「知ってるーーー?乃々華にまた新しい彼氏出来たらしいよ!!アイツまだ18歳なのに既にもう何人と付き合ってるんやろうか?笑 ヤバイよね?笑」
楓「・・・・・・。」
それからかなり時間は経っていた。楓は無言の時間が増えてきたが、これは会話が出来ないという理由ではなく、僕には尿意を我慢しているように見えた。時折、体をくねらせているようにも見える。両手は足の付け根近くに伸びていて、ソワソワしているのは明らかだった。
楓「・・・・・・。」
そして告白出来ない尿意に焦っているようにも見えた。僕がそれを指摘するとまた彼女は顔を真っ赤にするだろう。しかし僕はどうすることも出来ずに、そのまま2人の会話は滞ってしまった。
僕「えっ・・・、」
僕は思わず声が出た。それはよく見ると楓のカバンの中に、空になった沢山のペットボトルが何本も見えたからだった。なんと500mlのペットボトルが3本も入っていて、しかも全部空のように見える。ハッキリとは見えないので分からないが・・・。
楓はそんな僕の様子に気が付いたのか、スマホを開いて文字を打ち込み始めた。
ピコーーーーン!!
そして僕のスマホが鳴った。スマホを確認してみると、なんと楓からのLINEが届いていた。
楓「すいません。ウチ、緊張しいなんです。」
僕がそれを読んでいると、いつものように楓のLINE連発投下が始まった。
楓「人と会う前は、」
楓「緊張を解くために、」
楓「どうしてもお水を大量に飲んでしまいます。」
楓「普段ならペットボトル2本あれば十分な場合が多いですが、」
楓「下腹部さんとはまだ慣れていないので、」
楓「多めに3本家から持ってきたのですが、」
楓「足りませんでした。」
楓「もちろん下腹部さんを悪く言うつもりはないです。」
楓「これはウチの問題です。」
楓「乃々華と会う時ですら緊張します。」
今まで楓が頻尿気味だと、乃々華含め僕もそう思っていたが、その理由がやっと分かった。こんなに飲んでしまっては、むしろ我慢できる人の方が遥かに少ないだろう。
僕「だから、今もトイレに行きたいんだ?」
僕は声に出してそんな質問をした。楓は図星を突かれたようで顔を真っ赤にしながらも、僕にLINEを何度にも分けて送信してきた。
ピコーーーーン!!
ピコーーーーン!!
何度も何度も鳴り続ける僕のスマホ。画面を見ると楓のメッセージで溢れかえっていた。
楓「お恥ずかしいですが、」
楓「・・・そうです。」
楓「この前、ショッピングモールで急に抜けてしまった時も、」
楓「下腹部さんが来る前の待合室で、」
楓「大量にお水を飲んでしまったのが原因でした。」
楓「電車に乗る時間も40分以上あり、」
楓「ショッピングモールに着いた時には、」
楓「もうどうしてもお手洗いに行きたくて、」
楓「頭が真っ白になってしまいました。」
楓「何年も前からこういう経験が多いので、」
楓「ある程度我慢には慣れているつもりですが、」
楓「飲む量が飲む量なので・・・」
楓「慣れだけでは、どうしようもないです。」
スマホの時計を見てみると、22時の少し前を表示していた。それは1.5リットルの水を飲んでから相当に時間が経っている事を表していた。もちろん具体的な時間は彼女に質問出来ないが、遅くても僕が来る10分前くらいには全て飲み終えているだろう。尿意が限界なのも無理はない。
僕「我慢出来ないのなら、とりあえず今日は終わりにするか!!ごめんごめん解散しよう!!それとも送って行こうか?」
楓「・・・・・・。」
楓は無言のまま、僕を見つめてじっとしていた。その間も足をモジモジとさせている。誰がどう見ても尿意が限界なのは明らかだった。
楓「すいません、」
楓「正直に言うと、」
楓「お恥ずかしい話、」
楓「もう限界で、」
楓「動けないです・・・。」
楓はそんなメッセージを送信し、困ったような表情で僕を見つめていた。それは彼女なりのSOSのサインだった。よく見ると顔も紅潮している。そんな楓の様子を見て僕は、激しい興奮を覚えた・・・。
僕「ど・・・どうしようか?立てないの?」
僕は興奮を必死に抑えていたが、焦っている様子は隠せなかった。そんな僕の様子を見て、楓は今度はLINEではなく声に出してこう言った。
楓「・・・・・・動いたらアカン。」
楓「ヤバいわ・・・。」
楓「ごめんやけど近くの公衆トイレからバケツとか、何かあれば持ってきて欲しいです・・・」
僕「それってどう言うこと?」
楓「ええからっ!!」
今までで一番大きな声を出した楓。僕は一目散に待合室を出て、近くに佇む公衆トイレへと駆け込んだ。トイレは真っ暗だったが、駅近くの僅かばかりの街灯の光を頼りに掃除用具の扉を見つける。
ガチャガチャガチャ!!
僕「あっダメだ鍵かかってる・・・!!」
あいにくにも掃除用具入れは開かなかった。公衆トイレなので当然と言えば当然だが、そもそも開いたとしてもそこにバケツがある保証はない・・・。
僕(どうしよう・・・何もないな・・・)
トイレから一旦出て、僕は駅周辺をダメ元で探してみた。しかしやはり、代わりになるものは何もない・・・。
僕(時間がないな・・・でもとりあえず戻るか・・・。)
僕はどうすることも出来ず、とりあえず待合室に戻ることにした。待合室の入り口前まで来ると、どうやら中からスマホのLINE着信音が聞こえてくる。僕が急いで扉を開けると「西口楓」の名前でLINEの着信が入っている僕のスマホがベンチに置かれていた。そしてその隣に、楓は居た・・・。
楓「なんでスマホ・・・置いていったん・・・?」
そこに座っていた楓の足元には、大きな水溜まりが出来ていたのだった・・・。
〜つづく〜
次の話はこちら→第8話 残っていたおしっこ
前回の話はこちら→第6話 口を滑らせた乃々華
はじめから読みたい方はこちら→第1話 無口な美少女
オススメ
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残念なことに現段階ではおしっこの話は皆無。しかし尿意が限界になるまでの設定は出来上がっているので、後編を楽しみにしていてくださいっ!!
「この話の続編を書いてほしい!!」というリクエストをいただいているのですが、未だにどうしようかと悩んでいる段階です。いつかはやりたいけど、いつにしましょう?笑

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