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【妄想長編小説】白いストラトキャスター ~第17話 話し合い~

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このページは長編小説『白いストラトキャスター』の第17話です。

※今回の長編小説は登場人物紹介やあらすじ等はありません。読まれていない方は第1話から読むことをオススメします。

第1話から読みたい方はこちらからどうぞ→第1話 無口な美少女

前回のお話はこちら→第16話 体の中の3つの袋

僕「その事なんだけどさ、ずっと言おうか迷っていた事があって・・・」

楓「何や?」

1リットルという大量のおしっこが入っている計量カップの画像を見せる楓に対して、僕は話を切り出した。

僕「あのさ、俺が・・・そういう事に興味を持ち始めたら、楓はどうするの?」

楓「どういうことや?」

僕「どういうことって、そのまんまの意味!! 仮に俺がそういう性癖を持っていたとしたら・・・楓はどうする?」

僕は勇気を振り絞ってそんな質問を投げかけた。それはもう、どうにかなりそうなほどに恥ずかしい思いで、顔を真っ赤にしているのは鏡を見なくても分かるほどだった。

楓「仮にっちゅうか、そういう質問をするって事は、もうそういう事やんな?」

僕は何も言い返せないまま黙っていた。もちろんそんな事を見透かされるのは承知の上だ。

楓「そうなってくると確かに話は変わって来るな・・・。」

考えるように、楓は部屋の天井をじっと見つめていた。

楓「・・・前にも言うたけど、ウチは下腹部さんを異性として全く見てないで?」

僕「はい・・・すいません。それはもう存じ上げております笑」

楓「せやけど、これはウチの責任でもあるな。そういう性癖に目覚めてもおかしない言うか、今までそう言う事ばっか見してしもたし。」

僕「もし俺が性的に興奮してしまってもいいのなら、楓も自慢の大きな膀胱を見せる事が出来てWin-Winでしょ?」

楓「不本意やけどそうなるな。うーーん。確かにそやけど、どっか腑に落ちんねんなー。」

僕「これは話し合いで解決したい。俺が個人的にこのモヤモヤを無くしたいってのもあるけど・・・」

楓「でも、早いうちに言うてくれてありがとな?」

僕「うん。」

楓は腕を組んで考え始めた。真剣な顔をする楓を見るのも新鮮だ。そして楓は、どんな表情でもやっぱり可愛い。

楓「そうやな・・・それやったら、ウチが思う性的な事だけ禁止って事にするわ。でも逆に言うたら、それ以外は下腹部さん好きにしてええで?」

僕「・・・具体的には?」

楓「極端な話やけど、セックスはダメや。」

僕「そりゃあそうだろwww」

飛躍し過ぎた話に僕は驚いた。そもそも楓の口からそんな単語が簡単に出た事にも驚く・・・。

楓「キスもダメやし触るのもアカンで。あとトイレしてるとこを見たい言うのもダメや。性器見せる事になるし、そもそもそんな事恥ずかしーてでけへんわ。」

僕「さっきから極端過ぎるって!!笑 もっと際どいところを話し合おうよ!!」

楓「例えば?」

僕「例えばそうだね・・・おしっこの音だけを聞きたいとか?」

楓「なるほどな・・・。」

楓は腕を組んでまた考え始めた。首を傾げて少し恥ずかしそうにしている・・・。

楓「恥ずかしいけど・・・ええで?///」

僕「マジで?笑 恥ずかしいのはいいの?恥ずかしくても性的じゃないと楓が捉えれば、俺の好きなようにしていいって事だよね?」

楓「多少恥ずかしいのはしゃあないわ。ウチも責任は感じとるし、その辺はどうにかするで。」

僕「おお!! それなら俺からしたらメチャメチャ都合が良いぞ!!笑 この話しておいて良かった!!笑」

僕はこの日一番の収穫をしてしまった。それならこれから楓の膀胱事情を気兼ねなく聞き出せる。こんなに都合にいい話はない・・・。

楓「ウチも付き合わへんって釘を刺した人からギター貸して貰うし、分からんとこは教えてもらうし、趣味にも付き合ってくれるし、都合がええのはお互い様や。」

僕「つまりWin-Winだね?笑」

楓「そういう事やな。」

僕「約束だね!!笑 こんなに都合が合うとは思わなんだ笑 話してみるもんだなー笑」

楓「細かい性的な境界線はまた今度話すとして、時間ないし弦交換の続き教えてや!!」

僕「そういえばそんな事してたな。どこまで進めたんだっけ?笑」

ベッドの上に放置されていたギターを楓は持ち上げ、僕に渡してきた・・・。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

僕「新しいギター弦って本当によく伸びるから、こうやってどんどん引っ張って!!」

それから数分後、あっという間に弦交換は完了した。僕はベッドに座ったまま、張り替えたばかりの新しいギターの弦を引っ張っていた。

楓「こ、怖いわ。切れそうや・・・。」

僕「ある程度でいいよ。これやらないとチューニング合わせてもすぐに合わなくなるんだよねー。」

楓「弦の音階ってなんやったっけ?メモするわ。」

僕「6弦からE、A、D、G、B、Eだね。ピアノやってるからミ、ラ、レ、ソ、シ、ミって言った方が分かりやすい?」

楓「どっちでもええで。」

楓はスマホのメモ機能を開き、一生懸命に文字を入力していた。

僕「実はギターのチューニングって他にもあって、全ての弦を半音下げたり、6弦だけ2度とか、重めの曲だと4度落としたりとか結構種類ある。」

楓「そうなんや。」

僕「で、楓が弾きたい曲はエルレのAlternative Plansだけだよね?」

楓「うん。」

僕「この曲はレギュラーチューニングだから今教えたチューニングでいい。もし他の曲やりたくなったらチューニング違うかもだから教えてよ!!」

楓「他の曲に手を出すほど余裕ないで笑」

僕「チューナー要る?楓は絶対音感あるから必要ないよね?笑」

楓「うーーーん。一応念の為、借りといてもええ?」

僕「全然いいよ!! ケースも交換弦も一式貸しておくから!!」

楓「うん。ありがとな。」

僕はチューナーやピックケースなど、ギター関連の小物を全てギターケースのポケットに入れた。

僕「これから勉強漬けになるだろうけど、いつギター練習すんの?笑」

楓「ギター練習で頭を休ませるんや。勉強勉強って詰め込むだけやと、ウチの脳みそパンクするで笑」

僕「勉強もギターも無理しないでね?笑」

楓「うん。」

僕「これからはバイトも減るの?」

楓「うん。センター試験までは土曜日だけの週一シフトになるわ。」

僕「むしろバイト続けるだけでもスゲーけどな笑」

楓「バイト先のみんなには申し訳ないわ。ホンマに・・・。」

僕「でもそれはバイト始める前から話してたんだよね?3年生になると勤務減りますって!!」

楓「そうや。店長にももちろん言うてあるけど・・・。」

僕は立ち上がってギターをケースに静かに入れた。

僕「いやでも待って。楓って店長と話せるの?笑」

楓「話した事ないで?笑」

僕「ヤバ笑 面接とかどうやって進めたの?笑」

楓「乃々華が事前に「話せない子なんです」って言うてくれてて、面接はウチとウチの母さんと乃々華の3人で行ったんよ。」

僕「面接と言うよりも4者面談!!笑」

楓「キッチンのみの希望やし、入れるポジションも客席から見えんとこだけやし、希望シフトも少しだけ。今みたいに3年生に上がったら週一にするって条件を並べて・・・。」

僕「なるほど!! だから楓は人と話す必要がないポジションしか出来ないのか!!」

楓「そうや。乃々華とお母さんが「扱いづらいですが、きっと仕事は一生懸命やってくれます!!」って何度も頭を下げてくれたんや・・・。」

僕「・・・店長もよくそんな子を採用したなオイ笑」

楓「ホンマやな。ウチはずっと周りに助けられとる・・・。」

僕「バイト辞めるまでには店長や周りの人に、ちゃんと感謝を伝えないとね?」

楓「・・・うん。それもホンマに思てる。」

しばらく沈黙が続いた後、僕はリュックを持って忘れ物の確認をはじめた。

僕「そろそろ帰るわ。勉強もギターの練習も頑張って!!笑」

楓「うん。ありがとな。」

僕「バイト以外で今度会えるのっていつ?」

楓「・・・見当もつかんわ。夏休みとかちゃう?笑」

僕「マジかよ。スゲー先だなこりゃ・・・」

楓「タブ譜の読み方は多分大丈夫や。もし他にギターで分からへん事があったらLINEするかも。」

僕「全然いいよ!! 俺、楓と違って暇だし?笑」

襖を開けて、僕と楓は一緒に玄関に移動した。気が付けば時刻は22時を過ぎている。

楓「駅まで送るで?」

僕「えっ。自転車ここに停めたから大丈夫だよ?」

楓「それやったら駅まで一緒に歩こうや。話したい事があんねん!!」

ガチャーーーーン!!

僕は楓の家の敷地内に置いていた自転車のスタンドを強く蹴り上げて、楓と一緒に駅を目指して歩き始めたのだった・・・。

僕「なんだよ話って!!笑 その改まった感じがまーーた怖いなオイw」

楓「別に大した事やないで?笑」

ニヤニヤしながら楓は僕の隣を歩いていた。雰囲気から察するに、ネガティブな話ではないと言うことだけは分かる。

楓「・・・下腹部さんてウチのどこが好きなん?笑」

僕「ブッフwww」

何を訊かれるのかと思えばそんな事だった。そんな事がいちいち知りたいのだろうか?だとすると尚更、楓が可愛くて仕方がない・・・。

僕「どんな話をするのかと思えば・・・笑」

楓「ええから教えてや!!笑」

何から話そうかと考えていた僕だったが、覚悟を決めて立ち止まった。

僕「一目惚れだよ。初めて会った時からすんごい可愛い子だと思った。そしてバイト中にたまたまマスク外した姿も見てしまってさ・・・。」

僕が初めて楓のマスクを外した時の話をペチャクチャと喋っていると、楓の反応は意外なものだった。

楓「そうなんや・・・。」

少し落胆したような楓の反応に僕は違和感を覚えた。さっきまでの明るい笑顔はなくなり、落ち込んでいるようにも見える・・・。

僕「なんで少し残念そうなの・・・?」

楓「うーーーーん。どこから話したらええんか分からんけど・・・。」

僕「そんなに話長くなるの?」

楓「ううん。ウチ、自分で言うのもあれやけど・・・確かに顔は良い方やと思うねんな?」

僕「うん。良い方どころじゃないけどな笑」

楓「母さんも叔母さんも美人やし、乃々華もホンマに可愛いし・・・。」

僕「いやマジで楓の家系はヤバいよ笑 さすがに乃々華のお母さんの顔は見た事ないけど笑」

楓の家から駅までの道のりはあっという間だった。駅の小さい待合室が既に見えてきている。

楓「ウチ実は、告白された事もたくさんあんねん。」

僕「だろうね。別にそれは驚かないよ?笑」

楓「みんなウチの顔しか見てへんのや。ウチはそれがホンマに嫌なんや・・・。」

僕「もしかして、マスクとキャップでいつも顔を隠してる理由ってそれなの?」

楓「うん。なるべくウチの顔は見やんで欲しい思てる。」

僕「それは贅沢な悩みだなー笑」

何気なくそんな言葉を口にした僕を、楓は冷たい目で睨みつけた。

楓「贅沢って思うんも分かるけど・・・ウチは嫌や。嫌なもんは嫌。」

僕「こればっかりは本人にしか分からないだろうなー。」

楓「昔っからみんな、「楓は可愛いからええなぁ?」の一点張りや。ウチの努力も性格も、みんな何も見てくれへん。ウチの評価は可愛いで簡単に片付けられて終わりなんや・・・。」

僕「・・・・・・。」

2人に長い沈黙が流れる。気が付けば駅の待合室前に到着していた。

楓「もちろんウチは周りの人間に対して閉鎖的やから、こう言われるんも理解出来るんよ。」

僕「まぁそうだね。中身を見て欲しいって言いながら、見せてもくれないのは矛盾してるし・・・。」

ガチャーーーーン!!

話が長くなると思った僕は、一旦自転車を停めようとスタンドを立てた。

楓「せやけどウチ、下腹部さんには色んな一面を見せてると思うねんな?」

僕「・・・うん?」

楓「それやのに、ウチの好きなところを聞いたら初めに言われたんが顔やった。」

僕「ごめん。好きな所を聞かれたから、まずは一目惚れをした話をしなきゃなと・・・」

楓「最初に一目惚れやったとしても、ウチの事が分かってきた今では、まず先にウチの中身について好きやって言うてくれるんかと勝手に思とった・・・。」

僕「ご、ごめん・・・。」

重たい空気が2人の間に流れた。僕は何も言い返せないまま時間だけが流れていく・・・。そしてかなり時間を置いた後、楓は僕よりも先に口を開いたのだった。

楓「・・・ううん、ごめんな。今のはウチが悪いわ。ちょっと寂しかっただけや。」

僕「いや別に大丈夫!! ってかこっちの配慮が足りなかったと言うか・・・」

必死にフォローしようとする僕を見て、楓は申し訳なさそうに話を続けた。

楓「ううん。今のは間違いなく完全にウチが悪いで。自分から話をしとって、納得のいく答えまで求め過ぎや。自己中にもほどがある。ホンマにごめんな?」

僕「そこまで言わなくても・・・。」

楓「ウチ重いやろ?面倒くさいやろ?いつもそんな自分が、ホンマ嫌になるで・・・。」

楓は少し泣きそうになっていた。確かに彼女を支えるのは苦労しそうだとは思ったが、別にそれが嫌なんてことは一切思わない。

楓「こんな別れ方でごめんな・・・。」

僕「いやいや俺は全然大丈夫だから!! ここまで送ってくれてありがとう!!笑」

楓「うん・・・。」

元気がなくなってしまった楓を見るのは僕だって悲しくなる。どうにか笑顔でお別れしたい・・・。

僕「俺はこの話をしてくれて嬉しいよ。だって、これからは心置きなく楓の事を可愛いって言いまくれるし笑」

楓「・・・そうなん?」

僕「可愛いって言われること自体は嫌じゃないんでしょ?」

楓「・・・うん。」

僕「顔以外だと大食いなところとか、それを隠そうとするところとか、死ぬほど可愛いけどね?笑」

楓「・・・そっちなん?」

僕「あと、まだ楓と話が出来なかったくらい前の話だけどさ、乃々華と3人でショッピングモールのお寿司屋さんに行った時覚えてるでしょ?」

楓「ウチの誕生日の日やな?」

僕「そう。その時さ俺、雨の日で入り口のところで思いっきり転けたよね。」

楓「覚えとるわ・・・笑」

僕「あの時の楓がツボにハマってて本当に可愛かった!! クックックって喋れないのに笑ってくれたよね?笑」

楓「うん・・・笑 あれはホンマにオモロかった!!笑 あんなに情けない転がり方はホンマにお腹痛かったわ!!笑」

笑顔が戻ってきた楓を見て僕は一安心した。やっぱり楓は笑顔が一番似合っている。

僕「それなら俺、もう帰るから・・・ギターで分からない事あったら連絡して!!」

楓「うん。今度は土曜日にバイトでな?」

僕「うん、バイバイ!!」

楓「バイバイ!!」

ガチャーーーーン!!

僕は自転車のスタンドを蹴って自転車に跨り、自転車をゆっくりと漕いで行った・・・。そしてしばらく進んだ後、どうしても後ろが気になった僕は振り返った。

すると楓は、待合室近くの街灯に照らされながら、小さくなって見えなくなりそうな僕に向かって、ずっと手を振り続けていたのだった・・・。

〜つづく〜

次の話はこちら→第18話 夜の公園

前回の話はこちら→第16話 体の中の3つの袋

はじめから読みたい方はこちら→第1話 無口な美少女

限界なのに警察に呼び止められた女子高生

アンケートにて↑の妄想小説が良かったと複数人からご回答いただきました。ありがとうございます。

女子大生が開いた、新しい扉

もちろん僕はこの小説を書いた張本人なのですが、たまに「どんな内容だったっけ?」となるものがあります。これがその一つです(それならオススメすんなw)。

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