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【妄想】ショッピングモールの壊れたエレベーター(前編)

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俺は海(かい)。しがない25歳のサラリーマンの男だ。今日は仕事がかなり遅くなってしまったが、明日は休日を貰えた。嬉しいことだ。

ちょっとだけ特別な気持ちになって、俺は仕事帰りのいつもの道とはちょっと外れた場所を運転していた。というのも、狙っているお店があったからだった。

前からずっと気になっていた丼物の飲食店のテイクアウトをしようと急いでいた。ラストオーダーは21時半。現在の時刻は21時19分。もし逃してしまったら次はいつになるか分からない。俺はハンドルをトントン指で叩きながら、信号が青に変わるのを今か今かと待っていた。

やっと着いた時にはラストオーダーまで残り5分だった。注文するメニューももう決まっている。しかし大変なのはここからだった。

そう。目的のお店はショッピングモールの4階だった。広すぎる駐車場に適当に車を停め、俺はがむしゃらに店内に入った。見慣れているはずなのに見慣れないほどガラガラになっている閉店間際のショッピングモール。俺はあたりを見渡して、エレベーターに目をやった。

俺は走り、エレベーターの上のボタンを押す。すると既に1階に着いていたのか、エレベーターの扉はすぐに開いた。

乗り込んですぐに扉が開いた。俺は急いで出ようとしたが、若い女性とその娘らしき2人がエレベーターに入ろうとしていた。

危うくぶつかるところだった。よく見るとエレベーターはまだ1階と表示されていた。どうやら僕が乗り込んだ後にこの親子も急いで乗り込もうとしていたみたいだ。

彼女はそう言って、3階のボタンを押した。

エレベーターの小さなモニターは、そのまま1階と表示されたままだった。扉は閉まったが、そこからいくら待っても動こうとしない。

俺は目で確認する。自分で押した4階と、彼女が押した3階のボタンが光っていることは疑いようがない。明らかに様子がおかしかった。

俺と若い女性とその娘の3人が、エレベーターに閉じ込められた瞬間だった。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

俺たちはその場に座り込んでしまった。非常ボタンを押しても全く反応がない。

俺は李乃に言われてハッとした。急いでいたあまり、車にスマホを置きっぱだった事に今気づいたのだった。

李乃は僕の言葉でとても絶望的な表情になっている事が分かった。

俺も絶望的な気持ちになった。なんでよりにもよって、お互い連絡が出来ないのだろう。

李乃はスマホをしきりにいじっていた。

とても不安そうな顔で、彩葉ちゃんは母親を見ていた。

李乃は必死に娘を励ましていた。動く気配など全くないのに・・・。

俺は立ち上がり、再度非常ボタンを押した。連続で押したり、強く押し続けてみたり・・・色々試したが全くもってダメだった。

今度は扉を無理やり開こうとした。もちろんビクともしない。李乃も少しでも力になりたいと、2人で協力してこじ開けようとしたが、全くダメだった。

俺達は、ただ呆然と立ち尽くしてしまった・・・。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

しばらく続いた沈黙を破ったのは李乃だった。彼女は俺に向かってスマホの画面を見せた。時刻は21時55分と表示されていた。

すると李乃は俺の話を遮って、いきなり大声で叫び出した。

急に取り乱してしまっていた。完全に参ってしまっているようだった。よく見ると彼女の目には涙が浮かんでいる。

数分前まで励ましていた母親を、今度は俺が励ましていた。こんな時に母親がパニックになってしまっては、娘さんが心配でならない。

しかし、そんな心配もいらないくらい彩葉ちゃんは冷静だった。全面ガラス張りの特殊なエレベーターから見えるのは、大型の水槽の内側からの景色だった。熱帯魚達がたくさん泳いでいる水槽。エレベーターからそれを眺める俺たち。

取り乱した李乃が、はじめて放った一言だった。少し冷静になったようで俺はとりあえず安心した。

※イメージ画像 この画像ではエレベーターが3階から4階に向かっている途中だが、1階に降りると水槽の景色が全面に現れる仕様になっている。

そうこうしているうちに時間は22時をまわった。もしかしたらと思い、俺はエレベーターの壁を叩きながら、必死に助けを求めた。警備員や従業員が通るかもしれないからだ。

俺たちはこれでもかと大きな声で叫び続けた。彩葉ちゃんも協力してくれている。しかし壁はガラス製。強く叩くのはさすがに気が引ける。

それに目の前の景色は水槽だ。少しでも壁を叩くとお魚達がビクッとしているのが分かる。彼らへのストレスも考えると、あまり目立った動きは出来なかった。

それでもしばらく頑張ってみた。しかしその直後、あたりの電気が一気に消えてしまったのだった。俺たちの不安は一層高まってしまう。

幸い水槽の電気はそのままだった。その光がエレベーター内にも入り込む。多少暗くはなったものの、エレベーター内の俺たちに消灯の影響はほとんどなかった。

俺たち3人は、今の状況を少しずつ受け入れているような気がした。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

隅に座る彩葉ちゃんはウトウトしていて、ほとんど寝ている状態だった。母親である李乃はそんな娘の頭を撫でながらそんなことを言っていた。カバンに入っていた小さなタオルを巻いて、彩葉ちゃんはそれを枕代わりにしていた。

すると李乃はちょっと笑ったような表情でこっちを見てきた。

フワフワしている雰囲気の彼女も、この時ばかりはキリッと冴えた表情だった。これが母親の強さなんだと、俺は何となくだがそう感じていた。

その時、俺はハッと気づいた。

そこから俺たちは意気投合した。話を聞くとどうやら李乃とは同い年で、学年も一緒だった。しかも地元も思いのほか近く、当時の話で盛り上がっていた。高校の同級生でお互い知っている人がいたりなど、知っている人も多かった。世間はとても狭い。

気がつけばお互いタメ口になっていた。初めて会った人なのに、昔の友人と再会したような、そんな気分だった。

俺は話を戻した。相変わらずエレベーターは閉まったままだ。

そんなことを言っていた李乃だったが、なんと10分もすれはスヤスヤと眠っていた。毎日忙しくて疲れているんだろう。そんな彼女の様子を見て安心し、俺もその場で寝ることにした。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

どのくらい時間が経ったのだろう? 俺は彩葉ちゃんの声で目覚めた。母親である李乃も、俺とほぼ同時に起きたようだった。

俺は薄々心配していた事態が起こってしまったと悟った。

李乃はスマホを俺に見せながらこういった。

俺は辺りを見渡した。気の利いたエレベーターだと、非常用として簡易トイレなどが置かれている非常ボックスが設置されていたりするのだが、このエレベーターにそんなものはなかった。

李乃は困った表情で彩葉ちゃんにこう言った。

李乃は困ったような表情でこっちを見てきた。俺にだってどうすることも出来ない。

彩葉は今にも漏らしそうだった。6歳の女の子が思いっきり股間を抑えている。

李乃は困り果てていた。そんな彼女の顔を見て、俺は決心した。

俺は彼女達に背を向けてある行動をしていた。そう、放尿だ。

李乃の叫び声が聞こえてきた。無理もない。初対面の男が目の前で放尿しているのだ。

壁に向かっておしっこを出していた俺のおしっこは、次第に床に水溜りを作っていた。その水溜まりが少しだけ大きくなった頃、俺はおしっこを出し切るところだった。

彼女は声を荒げて怒った。でも俺は至って冷静だった。そんな俺はおしっこを出し終わり、ブツをズボンにしまいながらこう言った。

これが俺にできる最大限の気遣いだった。

彩葉はそう口にすると、すぐにスカートをあげてパンツを下ろそうとした。振り返っていた俺は慌てて目を隠して後ろを向く。ちょっと白いパンツが見えてしまった。

しばらくすると「シューーーーーーッッ!!」と勢いの良いおしっこの音が聞こえてきた。俺は後ろを向きながら、耳を抑えるふりをしていた。ちょっと魔が刺して、彩葉ちゃんのおしっこを聞いてみたいという衝動に負けしまったのだ。これは今でも自分に引いている。

彩葉ちゃんのおしっこは長かった。相当我慢していたんだろう。

俺はガラスに反射する彩葉ちゃんを見ていた。彼女はしゃがんでいて、母親である李乃からティッシュをせがんでいた。

彩葉ちゃんは言われるがまま、しゃがみながら何度も腰をフリフリし、股間についたおしっこを振り落としていた。ガラスに反射してその光景を見てしまっている。見たいと思ってしまっている自分が嫌になった。

李乃からの返事をもらい、俺は後ろを振り返った。

そこには黄色い水溜りが2つ出来ていた。1つは壁を伝うおしっこの水溜り。そして驚くのはもう1つの水溜りだった。色は2つしてほとんど変わらなかったが、壁に伝っている俺のおしっこよりも、明らかに量が多かったのだ。

俺はついつい声が出てしまった。とても6歳の女の子が出したとは思えない量にただただ驚いていた。

彩葉ちゃんを励ます李乃。彼女だって尿意を我慢しているはずだ。

そんな俺の提案に、李乃はちょっとモジモジしながらこう答えた。

おしっこの匂いが立ち込める密室のエレベーター。俺たち3人は朝になるのをひたすら待っていた・・・。

〜つづく〜

次の話はこちら→ショッピングモールの壊れたエレベーター(後編)

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