今回のお話は「蓄尿履歴」という中編?小説の最終話です。今回の話だけ読んでもいいですが、蓄尿履歴の仕組み等が分かりやすい為、読まれていない方は最初から読むことをオススメします。
第1話はこちら→蓄尿履歴 その1 ~妹編~
前回の話である第4話はこちら→蓄尿履歴 その3 ~憧れの芸能人前編~
陸「そんな都合のいい話があるかーーーー?」
愛茉「だから本当なんだってば!!」
あれから数日後、俺は愛茉とファミレスに来ていた。以前行った場所と同じだ。そしてたまたまなのか、席も同じだった。もう1人もそろそろ来る予定なのだが・・・。
ちゃんちゃーーーーん〜〜〜〜♪
ふざけたファミレスの来店音が響いたかと思えば、3人目の客が入ってきた。
瑠奈「お兄ちゃん、もしかして・・・彼女さん?」
愛茉「んっっ///////」
陸「ちっ・・・ちげーよっ!!」
何を隠そう。3人目の客は俺の妹である、瑠奈だったのだ。
陸「申し訳なかった!! お前ら2人には本当に申し訳ないことをしたっ!!」
数分後、俺は2人にひたすら謝っていた。愛茉はもちろん、瑠奈は全く理解できない様子だったのも無理はない。
瑠奈「一体何について謝っているのか意味不明なんだけど、どゆこと?」
愛茉「妹ちゃんに説明するの?何から言えばいいんだっけ・・・?」
瑠奈と愛茉の2人は、改めて顔を見合わせた。
愛茉「紹介が遅くなってごめんね!! 高校時代のクラスメイトの小野寺愛茉です」
瑠奈「い・・・妹の瑠奈です。いつも兄がお世話になっています・・・」
2人の会話に俺は驚いた。
陸「あっそういえば2人は初対面か・・・」
愛茉「高校で見たことはあるけど、話すのは初めてだよ。陸に全然顔似てないよね!! 凄く可愛い!!」
瑠奈「話したことはなかったですが、愛茉さんを見ていつも可愛いなって思ってました!! つたない兄を彼氏にしてくれてありがとうございます!!」
愛茉「へっっ??? 違うよ瑠奈ちゃん!! 私たち付き合ってないから!!」
瑠奈「えっっ?と言うことは一体・・・」
陸「だから状況を説明するためにお前らを呼んだんだろ・・・」
俺は事の発端を、はじめから時間をかけて詳しく説明することにした。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
陸「・・・とまぁこんな感じ。なんか質問とかある?」
俺が話を終えると、妹の瑠奈は顔を真っ赤にしていることに気がついた。
瑠奈「ありえない・・・何で私の蓄尿履歴とか意味の分からないもの見せられないといけないの?というか蓄尿履歴って何!!」
陸「だから申し訳なかったって言ってるじゃねーか!!」
瑠奈「それで済む訳ないでしょ!!」
陸「本当にごめん!! でもやっぱり、瑠奈は知らなかったのか?」
瑠奈「分かる訳ないでしょ!!」
陸「愛茉みたいに記憶が飛んだのかな?」
瑠奈「あってもなくてもどうでもいい!! そんなことより何で私がこんな恥ずかしい目に遭わないといけないの!!」
愛茉「ごめんね瑠奈ちゃん!! ちょっと落ち着いて・・・」
瑠奈「というか、事の発端は全部愛茉さんじゃないですか!! 何であんな事するんですか!! 」
陸「うん分かった。とりあえず謝罪はこれから時間をかけてしていくから、まずは話を聞いてくれ瑠奈!!」
愛茉「ここからは本題なんだよ瑠奈ちゃん!! 落ち着いて!!」
興奮していた瑠奈は、2人の言葉で少し落ち着きを取り戻した。「ふぅーーー!!」と瑠奈の溜め息をする声が聞こえる。
陸「最初に瑠奈の蓄尿履歴を見た時は何もなかった。でも、蓄尿履歴を見るたびに被害はどんどん大きくなっていくのかもしれない・・・」
瑠奈「どういうこと?」
陸「さっきも説明したように、俺が最初に見た蓄尿履歴は瑠奈、お前だ。そして2人目は愛茉だった。瑠奈の場合、何も副作用みたいな被害は出なかったんだが、愛茉の場合はそれがあった」
瑠奈「どんな被害?」
陸「記憶喪失だよ。愛茉の蓄尿履歴を見終えた直後、愛茉は俺に対する記憶がなくなったんだ。しかも驚くのはここからで、さらに数日後には急に記憶を取り戻して、元に戻ったんだよ」
瑠奈「話が全然見えてこない。そんな一時的な記憶喪失なんてある訳ないじゃん。愛茉さんが演技してたんじゃないの?」
愛茉「そんな訳ないじゃん!!」
陸「まぁ俺も演技だと思わなかったと言えば嘘になる。瑠奈もどう思ってたっていい。でも次はさすがに、偶然とは思えない・・・」
瑠奈「次って3人目のこと?」
陸「3人目の蓄尿履歴は誰だと思う?」
瑠奈「私も知っている人なの?」
陸「もちろん。お前だけじゃなく、日本中ほとんどの人が分かるはずだよ」
瑠奈「芸能人ってこと?」
陸「そう。そしてその芸能人は、最近ニュースで話題になったあの人だ」
瑠奈「あの人って?」
陸「羽紗だよ・・・あの、女優の・・・」
瑠奈「あっ!! 知ってる!! 私、あんまり好きじゃないけど・・・って、あっ!!・・・嘘でしょ?」
陸「気がついたか。いや、みんな分かるだろうな。数日前、日本中で話題になったあの羽紗ちゃんは・・・」
瑠奈「亡くなったじゃん。つい3日前に・・・」
陸「そうだよ。死因は公表されてないが、彼女の履歴が見れなくなったその日の夜、羽紗ちゃんが亡くなったと速報ニュースで取り上げられた・・・本当に偶然だと思うか?」
瑠奈「怖いこと言わないでよ!!」
陸「事実を言ってるだけだ。愛茉は記憶が戻ってからは特に何も変わったところはない。だから瑠奈も心配なんだよ!!」
瑠奈「そんな!! 勝手に恥ずかしいこと見られて、今度は死ぬかもしれないなんて馬鹿げてる!!」
落ち着きを取り戻したかと思えば、瑠奈はまた取り乱していた。
陸「だから落ち着けって!! そんなこと言ってないだろ!!」
瑠奈「言ってるようなもんじゃん!! イヤだよ!! お兄ちゃんのせいで!! 愛茉さんのせいで私も死ぬの?この人殺しっっ!!」
急に立ち上がったかと思えば、瑠奈は駆け足で店を出て行くのだった・・・。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
陸「背中、見てくれるか?」
30分後。ファミレスを出た俺と愛茉の2人は、いつもの公園のブランコに腰掛けた。愛茉に背中を向け、俺は服を胸まで捲り上げる。
愛茉「ゼロだよ。カウントダウンはゼロになってる」
陸「やっぱりそうか。俺は、本当に取り返しのつかないことをしてしまった。羽紗本人はもちろん、関係者や全国のファンに対しても、謝っても謝りきれないだろ・・・」
愛茉「謝るのはこっちの方だよ・・・全て私が悪いんだもん・・・」
俺は愛茉の方を見た。すると彼女は涙を流していたのだった。
愛茉「まさかこんなことになるなんて・・・思わなかった。瑠奈ちゃんの言った通り、私はただの人殺しだよ・・・」
陸「これからどうすればいいかな?俺達、どうやって生きていけばいい?」
愛茉「警察署に行って自首しても、誰も信じてもらえないしね・・・」
陸「あぁ、病院に連れて行かれるだけだよ」
愛茉「私が陸くんにナイフを刺した時同様、証拠がないから捕まえようもないし・・・」
陸「これってそもそも、ただの偶然じゃないのか?本当に蓄尿履歴のせいで、羽紗ちゃんは亡くなってしまったのか?」
愛茉「確かめようもないじゃん。自分なりの罪滅ぼしをするか、そもそも偶然だと思って生き続けるか」
陸「どっちも地獄だなー」
愛茉「ところで瑠奈ちゃんは?追いかけなくて大丈夫なの?」
陸「さすがに大丈夫だろ。家で、自分の部屋で引きこもっているはず。今後はさらに瑠奈に嫌われるな・・・最悪だ」
すると突然、俺のスマホが鳴った。
プルルルルッッ!!
陸「えっ?お母さんからだ」
俺はすぐに通話を開始した。すると母親はかなり焦っている様子で、俺は全身の血の気が引いていく感覚だった。
陸「ど、どうしたんだよ・・・」
母「瑠奈が!! 東京で警察に保護されているって!! 今すぐ迎えに行ってきて!!」
陸「は・・・・・・?」
何が何だか分からないまま、俺は愛茉を置いて、1人で電車に飛び乗った・・・。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
陸「ここか・・・」
警察署の指定された場所に行くと、瑠奈は膝を抱きかかえた状態で座っていた。彼女は下を向いていて、とても覇気を感じられなかった。
警察「横山瑠奈さんのお兄さんでいらっしゃいますか?何か身分を証明出来るものは・・・」
俺はポケットから大学の学生証を取り出し、警察官に見せた。しばらく警察官と話をしてから、瑠奈を連れて帰る事にした。元気のない瑠奈をおんぶして、警察署を出ていく・・・。
瑠奈「・・・・・・。」
彼女は相変わらず無言だった。何を言っても首ひとつ動かさない。幼い頃は軽かった妹の体重も、今ではずっと抱えるのはしんどいくらいだ。昔はなかった、背中に感じる2つの膨らみも気になる。
瑠奈「降ろして。恥ずかしい・・・」
初めて喋ったかと思えば、彼女は少し怒った口調で、謝罪の言葉もなかった。多少そんなことが気になりながらも、俺はそっと瑠奈を降ろしたのだった。
瑠奈「取り乱してごめん・・・迷惑もかけた」
陸「心配したぞ!! でも、俺もほったらかしにしてごめん。勝手に部屋にこもっているもんだと思ってた・・・」
瑠奈「正直に言うね。私・・・亡くなった羽紗の事務所に行ってきた」
陸「はぁ???お前、何言ってんだよ・・・というか行くまでは出来ても入れないだろ」
瑠奈「もちろん入れなかった。でもそこから記憶がなくて、気がついたら警察署で保護されていたの。どうやって入ったのかは分からないけど、なんか事務所内で暴れ回っていたらしい。だから警察呼ばれて保護されたみたいで・・・」
陸「大まかな話は警察から聞いたよ。お前がそんなことする訳ないって、今でも信じられないが・・・」
瑠奈「私も記憶がないし、正直、もう何が何だか・・・」
陸「とりあえず家に帰ろう。お母さんには特に何もなかったって話を合わせとく」
瑠奈「うん・・・」
俺と瑠奈の2人は、電車に乗って家に帰った。
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