※この物語はフィクションです。登場する人物、団体、名称は全て架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
このページは長編小説『FF外から失礼しますっ!!』の第8話です。第1話から読みたい方はこちらからどうぞ→第1話 駆け込んできた美少女
前回の話はこちら→第7話 おしっこの悩み~郷美の場合~
登場人物紹介
主人公と主要人物
名前 | 誕生日 | |
渡部 翔士 (わたなべ しょうじ) |
アイドルグループ「Family First Same(ファミリーファーストセイム)」の楽曲提供をしている本作の主人公。活動名とクレジットは「東海林 翔士(しょうじ しょうじ)」。第8話の今回から晴れて高校生となった。メンバーのせいでおしっこの性癖に目覚めてしまった思春期真っ只中の男の子。ちょっと遅めの成長期に突入し、身長は165cmほどになった。しかし姉の才加も165cmあるので、まだまだ伸びるだろう。 | 12月30日 |
セイメイ | 「ネーミングプロダクション」という芸能事務所の代表取締役兼社長。アイドルグループ「Family First Same」をプロデュースしている50代のオッサン。売れるためのマーケティング戦略はかなりの腕だが、歯は真っ黄色で汚く、おまけに頭もハゲ散らかっている。 | 5月7日 |
ミドル | 事務所の管理をしているセイメイの妻。基本口数は少ないが、思っていることはハッキリ言うタイプの50代女性。年齢の割には美人だが、怒らせたらこれはこれはとんでもない。 | 9月27日 |
内藤 光一 (ないとう こういち) |
サニーミュージックの音楽プロデューサー。実は元々ロックバンドのリーダーだったが、方向性の違いによりメジャーデビューから半年で解散した過去を持つ。 | 7月10日 |
渡部 才加 (わたなべ さいか) |
翔士とは8歳年の離れた姉。弟のちんこの匂いを理解している社会人2年生。最近は彼の家に入り浸り、一人暮らしを始めたアパートは留守しがちになってしまっている。 | 3月1日 |
ネーミングプロダクションのセイメイがプロデュースする5人組女性アイドルグループFamily First Same(ファミリーファーストセイム)。略して“ファミファ”。さらにファミファを略して“FF”とも言う。
メンバー
名前 | 趣味 | 特技 | 誕生日 |
和泉 依澄 (いずみ いずみ) |
アイドルの追っかけ | 歌 | 12月3日 |
佐倉 桜 (さくら さくら) |
車、バイク | スキー | 3月9日 |
安芸 亜希 (あき あき) |
ゲーム | ダンス | 10月19日 |
南 美波 (みなみ みなみ) |
漫画、アニメ | 絵 | 7月3日 |
里見 郷美 (さとみ さとみ) |
パンの留め具 (バッグクロージャー)集め |
集合写真の 右上に映ること |
3月10日 午前03時03分10秒 |
あらすじ
遂にメジャーデビューが決定した翔士が作詞作曲を手掛けるアイドルグループ「Family First Same」は、年明けのデビューに向けて忙しい日々を送っていた。
9月になっても曲が決まらなかった翔士は、レコード会社の音楽プロデューサーである内藤のアドバイスで、衝撃を受ける。そこからの曲作りは思いのほか捗り、何とか1月のデビューに間に合わせることが出来た。
メジャーデビュー記念ライブを見事に成功させ、その後の打ち上げにメンバー5人とスタッフや翔士を合わせた9人が参加した。その打ち上げもお開きになりそうな頃、尿意を催したメンバーの1人である依澄はトイレに立つ。
彼女の放尿音が聞きたかった翔士は自分もトイレだと言い、彼女について行くもあいにく男子トイレと女子トイレに距離があり、放尿音を聞くことは出来なかった。
そんな翔士の様子を終始観察していたメンバーの桜は、彼の行動を本人に問い詰めた。放尿音を聞いていることがバレてしまった翔士は何とか言い訳を探すのだが・・・
第1章 おしっこの悩み ~依澄の場合~
桜「ちょっと!! ちゃんと説明して!!」
翔士「い、いや・・・ちょっと!!」
桜「ちゃんと言えって!!」
Family First Sameのメジャーデビュー記念ライブを終えた後の打ち上げもお開きが近づいてきた、とある焼肉店のトイレの前で、翔士と桜は口論になっていた。
桜「サイテーーー!! 女子のトイレの音を聞いて興奮するわけ?そんなどうしようもなく気持ちの悪い性癖を持ちながら、その性欲を満たしてくれる相手へ楽曲提供しているんだぁ?へぇー。どんな神経しているの?」
依澄「ちょっと!! 落ち着いてよ桜!!」
翔士「た、たまたまですよ!! 男子トイレなのか女子トイレなのかちょっと一瞬混乱してしまって・・・」
桜「白々しい嘘ついてんじゃないわよ!! 依澄はね!! 人にトイレの音を聞かれるのが人一倍恥ずかしいと思ってる子なんだよ!!」
依澄「待って桜!! こうやって話されるのも恥ずかしいからストップ!!///」
依澄の顔は、真っ赤になってしまっていた・・・。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
依澄「ふぅーーーーーーっっっ!!」
中学時代。部活動を終えた依澄は、ずっと我慢していたおしっこを出そうと校内にあるトイレに駆け込んでいた。部活中に限界近くまで高まっていた尿意。急いで個室に入って、急いで服を下ろしたのだった。
「シューーーーーーッッ!!」
我慢していたおしっこをやっと放出している。なんて気持ちがいいのだろう? 思わず「ふぅーー!!」と声が出てしまっていた。
男子生徒A「おい!! 女子トイレからおしっこの音聞こえるぞ!!」
男子生徒B「マジじゃん・・・ヤバっ!!笑」
放尿中、トイレの外から野球部員の男子の声が依澄の耳に入ってきた。
男子生徒A「誰だと思う?」
男子生徒B「さぁ?可愛い子だったらいいよな!! 待ち伏せしようぜ!!」
2人の会話は小声だったがギリギリ聞き取れるくらいの声量だった。依澄はトイレから出るのが恥ずかしくなり、しばらくトイレも流さないまま動けずにいた。しかし最後のミーティングは大事な話があると顧問の先生が言っていた。すぐにトイレから出なければ、怒られるかもしれない・・・。
依澄(どうしよう?トイレの前で野球部の人が待っていたらどうしよう・・・!!)
悩み抜いた末、依澄は勇気を振り絞ってトイレを流し、そそくさとトイレから出る事にしたのだ。なるべく下を向いて何事もなかったかのように早歩きでトイレを出た。しかし、トイレの出口から5メートルくらいの近い距離に腰掛け、野球部の同級生の男子2人は依澄を見ていたのだった。
男子生徒B「よ・・・萬谷じゃん!!」
男子生徒A「マジじゃん!! よりにもよって校内一の美女!! 萬谷泉(よろずやいずみ)!!」
男子生徒B「シューーーーーッッ!! って音してたぞ笑」
男子生徒A「これは大ニュース!! 部員のみんなにもチクっちゃおうぜーー!!」
依澄「・・・・・・・//////」
依澄は恥ずかしさのあまり泣きたくなった。ただおしっこがしたくてしただけなのに、何でこんな辱めを受けなければならないのか・・・。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「シューーーーーーーッッッ!!」
そんな悩みを抱えたまま、依澄は高校生になった。芸能事務所に所属することになった彼女は、お稽古の途中で尿意が限界になり、また男子の前でおしっこの音を轟かせていたのだ。
依澄(は・・・恥ずかしい///)
恥ずかしさのあまり、またトイレから出るのが嫌になった。しかしトイレの出口は1つしかない。それに先にトイレに入ろうとしていた男の子だって、自分がトイレから出るのを待っている。割り込みをしたから謝る必要もあるのだ。
「ガチャ」
勇気を振り絞ってトイレの扉を開けた。するとその男の子は、思ったよりもトイレの扉近くで待っていたことに驚いた。
翔士「・・・!!」
そして彼は依澄以上に驚いていた。今出してしまった放尿音の大きさに、呆然としているようにも見えた。
依澄「はっっ////// わ、、、割り込んで、ごめんなさーーーい!!」
もう逃げながら謝ることしか出来なかった。何で聞かれると分かっている時に限って、尿意が限界なのだろう?依澄はそんな自分が嫌になっていたのだった・・・。
第2章 桜と入学式と春
セイメイ「それで翔士くん。次作シングルのデモ音源の締め切りが迫っているが、進捗のほどはいかがかな?」
翔士「明日には出来ますよ。でもどうせ、またボツなんだろチクショーーー!!」
セイメイ「私はまだ何も言っていないだろう。そもそも曲に関してのGOサインは今や私に権限はほとんどない。そうですよね内藤さん?」
内藤「いやいやそんな事ないですよ。僕はサニーミュージックの音楽プロデューサーなだけです。Family First Sameのプロデューサーはセイメイさんじゃないですか!!」
翔士とセイメイと内藤の3人はリモートで会議をしている最中だった。春休みも終わりが近づき、翔士の高校の入学式も数日後に迫っている。
デビューから数ヶ月が経過したFamily First Sameの活動はまずまずで、1月26日に発売したメジャーデビューシングル『NameStageへようこそっ!!』はトリコンチャートで初登場134位だった。
3月に発売した2作目シングルはチャート圏外だったが、それはあくまで売上ランキングの話。着実にFamily First Sameの5人は力を付けてきているとセイメイをはじめ、内藤や翔士もそれを理解していた。
セイメイ「悪いが私は別の仕事があるんだ。席を外すよ。2人で新曲について話してくれ。それでは」
一方的にセイメイは退出した。内藤と2人きりになる翔士。
内藤「翔士くん。新曲となるアルバムの2曲目についてなんだけど、今回はちょっと歌詞について思うところがある。ちょっといいかな?」
翔士「はぁー。何でしょう?」
内藤「さすがにワンパターンな気がしないかな?アイドルの曲なのだから、たまには恋愛ソングでも書いて欲しいんだが・・・」
翔士「書いてるじゃないですかー!! 恋愛とか知らないですけど、とりあえず適当に・・・」
内藤「その適当さが見え見えなんだよなー。深い歌詞を、もっと深みのある歌詞を書いてほしい」
翔士「いや、一応俺なりに頑張っているんですけど・・・」
内藤「頑張るってどう頑張るんだ?もっと手っ取り早い方法があるんじゃないか?」
翔士「手っ取り早い方法?」
内藤「したことないのかい?恋とか?」
翔士「はっ/// はぁーーーー?俺が?///」
翔士は顔が真っ赤になった・・・。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
才加「ご入学ーーー!! おめでとうございまーす!!」
翔士「うるせーよ。というか何で親じゃなくてお前なんだよ」
数日後、翔士は無事に高校の入学式を迎えた。地元の会津若松市内の公立高校で、偏差値はそれなりに高いところだったが、彼にとってはそこまでハードルは高くない高校だった。
才加「仕方ないじゃーん。親はどっちも忙しいっていうんだもーん!! 美人な姉の私が保護者として来てくれてんだから、翔士も目立って素晴らしい高校デビューを飾れるね!!」
翔士「誰が高校デビューだ!! 俺は高校生活の3年間も仕事をしながら1人で静かに過ごすんだよ。ってか、どこが美人なんだよ・・・」
才加「あーーあ。少ししかない青春時代を棒にふるなんてなんてもったいない。とりあえず私はもう帰るから!! あとは1人で帰れるよね?」
翔士「うん。大丈夫」
入学式も終わり、姉の才加も帰っていった。才加の背中を見とどけた後、翔士は校庭にあるベンチに腰掛けながら、スマホをいじってバスの時刻表を検索していた。春休みに入ってやっと母親に買ってもらったスマートフォン。これでやっと1人で東京に行っても怖くない。
くるみ「あの・・・ちょっと!!」
すると突然、見知らぬ女の子が翔士に声をかけてきた。
翔士「は・・・はい?」
翔士は下を向いていた顔をあげ、自分に向かって指を差した。本当に自分を呼んでいるのか確認したが、間違いなさそうだ。そして彼の目に映ったのは胸元にコサージュを付けた、ピカピカの制服を身に纏っている美少女だったのだ。
くるみ「あの、ちょっと/// もしかしてだけど、翔士・・・くん?」
翔士「そうだけど・・・」
その瞬間、彼女は翔士の腕を少々乱暴に掴み、そのままどこかへと走っていったのだった。
翔士「ちょ・・ちょっと!!」
くるみ「ごめん・・・恥ずかしいからこんなところでは・・・///」
しばらく走ること数十秒。人気のない体育館裏で足を止めた彼女は、やっと翔士の腕を離したのだった。
くるみ「いきなりこんなとこに連れてきてごめんなさい!! でも、どうしても恥ずかしいから・・・///」
翔士「は、はい?あの、どちらさんで?」
くるみ「私、酒井くるみって言います。翔士くんと同じでこの高校の新入生!!」
翔士「何で俺の名前を?」
くるみ「実は翔士くんに言いたいことがあって・・・///」
彼女は顔を赤くしながら、翔士の顔を伺うように見上げた。
翔士(か、可愛い・・・めちゃめちゃ可愛い!!)
くるみはとても小柄で幼いビジュアルをした女の子だった。とても春から高校生とは思えない。ランドセルを背負っても絶対に違和感のない童顔なお顔、145センチくらいの低身長、幼女のように真っ平な胸・・・。しかし、とんでもないほど可愛い女の子であることは間違いなかった。
くるみ「あの、実は・・・ずっと前から・・・///」
翔士(う、ウソーーー!!)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
内藤「したことないのかい?恋とか?」
翔士は先日、内藤から言われた一言を思い出した。入学式初日。春の桜が舞う体育館の裏で、彼にも春が来るというのだろうか?
翔士(いやいや、この子は俺を知ってるみたいだけど俺は初対面じゃん!! でも待って!! こんな可愛い子が俺の事を・・・!! それもずっと前からって・・・こんなチャンス、逃すわけにはいかないだろ!!)
翔士は急にポケットに手を入れ、印象良く見える自信のある角度で、彼女を見つめてこう言ったのだった。
翔士「ちょっと今は考えさせてほしいかな・・・俺、今は仕事で忙しくてさ。まぁ君くらいの可愛い子がどうしてもと言うなら・・・」
くるみは全く翔士の話を聞いていなかった。そして翔士の話を遮るように話を切り出したのだった。
くるみ「あの、実は・・・ずっと前から、Family First Sameの大ファンなんです!!」
ヒューーーーーーーーー。
体育館裏の2人に冷たい風が吹いた。さっきまでの暖かさはどこへ行ったのだろう?
翔士「な・・・なんだよ。俺のことが好きとかじゃないのかよ!!」
くるみ「はぁーー?こんな冴えない顔をしたチビな男に、何で惚れないといけないわけ?」
翔士「お前の方がチビじゃねーか!!」
くるみ「自意識過剰もここまで来ると、恥ずかしい通り越して拍手もんだわー」
翔士「お前が紛らわしいんだよ!! 何が「あの、実は・・・ずっと前から・・・///」だよ。告白だと思うじゃねーか!!」
くるみ「はいはい。妄想は1人で自分の部屋でやって、オナニーでもしてなー」
翔士「ちょw 小学生みたいなルックスして大人の単語を吐くんじゃねーよw」
くるみ「それで、なんか急にカッコつけて忙しいからって理由で告白されてもないのに振るしー、挙げ句の果てには上から目線だしーwww ギャハハウケるーーー。爆笑ーーーwww」
翔士(下品だ・・・一瞬でも可愛いと思った俺がバカだった・・・)
くるみ「お前みたいなヤツは名前で呼ぶ価値もないわ。で、お前ファミファの楽曲を全曲作詞作曲してるんだろ?」
翔士「1分前のお前と、キャラクターがあまりにも様変わりして戸惑っているのだが?」
くるみ「こんな自意識過剰な痛いヤツに恥ずかしがる必要全くないじゃん。で、話を変えんなよ!!」
翔士「そうだよ。俺が全曲作詞作曲してる。ってか、何で俺を知ってるんだよ!!」
くるみ「アイドル雑誌にデビューしたてのファミファ特集ページが組み込まれてて、曲を作ってる人が自分と同じ会津の人で、しかも同い年って分かったから運命感じちゃってー!!・・・でもまぁ結果こんなヤツだったけど」
翔士「誰がこんなヤツだコラ!!」
くるみ「東海林翔士って名前で顔写真もページの端に出てたから分かった!! 同じ高校だなんてまさか過ぎるし!!・・・でもまぁ結果こんなヤツだったけど」
翔士「おいw」
くるみ「待って待って!! もしかしてメンバーにも会ったことあるの?ねぇねぇ!! 教えてよ!!」
翔士「何度もあるよ。普通にこの前のメジャーデビュー記念ライブでは、俺も打ち上げ参加したし」
くるみ「マジか!!」
そう言ってくるみはカバンをガサゴソと触り出し、1枚のCDを取り出した。
くるみ「これ!! ファーストシングル!!」
翔士「おい!! これって北千住のライブハウスNameStageの500枚しかない初回限定版じゃないか!! お前、東京まで行ったのかよ!!」
くるみ「行ったよ!! 去年夏の新潟のフェスにも追いかけたし」
翔士「お前、一体いつからファンなんだよ・・・」
くるみ「結成間もない頃から!! 自己紹介でまださくちゃんにキャッチフレーズがあった時代だよ?」
翔士「俺より古参じゃねーか!! アイツにキャッチフレーズとか昔あったのかよ。アイツいつも下向いて佐倉桜でーすって言うだけじゃん・・・衝撃的過ぎるわ」
くるみ「自分、さくちゃんに憧れててーーー!!」
翔士「は・・・はぁ」(マジかよ。よりにもよってあのクソ桜推しか・・・最悪)
くるみ「さくちゃん超可愛いじゃん!! 一番可愛いよ!! しかもダンスも歌も上手くてカッコいいし、美人だし黒髪ロングストレートが世界一似合ってる!! 自分の目標だよマジで!!」
翔士「性格は悪いけどな」
次の瞬間、くるみはものすごい速さで翔士の胸ぐらを掴んだ。
くるみ「・・・お前、もういっぺん言ってみろ!!」
翔士「ス、スイマセンデシタ・・・」
くるみは思いっきり背伸びをしながら、持ち上げた翔士の体を乱暴に下ろした。とんでもない力である。
翔士「グガァ・・・痛ってーーー!!」
くるみ「ファミファを、そしてさくちゃんを一生応援してる♡」
1秒前とは全く違う満面な笑みで、くるみは翔士にそう告げたのだった・・・。
第3章 思わぬ形の高校デビュー
ミドル「翔士くん」
翔士「何でしょう?」
ミドル「ちょっと話があるから、後で私のところに来てくれないかしら?」
翔士「えっ・・・あっはい・・・」
入学式から数日後の初めての週末。仕事の為に事務所へとやってきた翔士は、隙間時間を見計らってミドルに呼び出されてしまった。ちょうどFamily First Same初のアルバム『First First Came』(ファーストファーストケイム)を配信でリリースしようと、セイメイと内藤の3人で話し合っていたところだった。
翔士(うわーーー。この前の焼肉屋での件、クソ桜にチクられたのかなー?ヤベーなー)
そんなことを思いながら仕事が一旦片付いた翔士は、勇気を出してミドルの机へと向かったのだった。
美波「亜希!! 今度の新曲センターだってよ!!」
亜希「どーーーーどえーーーーーー????」
依澄「驚き方が特殊w」
亜希「何で?何でなの?」
桜「次の新曲インストなんだって。かなり攻めてないかしら?アタシはウケがいいとは思えないけど・・・」
※インスト……インストゥルメンタルの略称。ボーカルのいない楽器だけの曲のこと。
美波「ダンスだけになるからダンスが一番上手い亜希がセンターなんだ!!」
ミドル「立ち位置は亜希ちゃんと依澄ちゃんが入れ替えになるだけ!! それ以外の3人は今まで通りの立ち位置でいいわ」
郷美「郷美がセンターの日は来ないのかーーー?」
桜「アンタがセンターは100年、いや1000年早いでしょ!!」
郷美「どーーーーどえーーーーーー????」
依澄「ツッコまない。ウチは絶対ツッコまない・・・」
美波「ライブ用としてやるのはいいと思うけど、インストをシングルにするって斬新過ぎない?ファンは聴いてくれるのかな?」
亜希「亜希がセンターなのは嬉しいけど、ダンス重視なら音源じゃなくてライブ用にしたらいいのに・・・」
ミドル「何言ってんの!! もちろんそのつもりよ!! 新曲はあくまでアルバムの1曲目として出すだけ。もちろんライブには映えるだろうから、これからのセットリストには含まれるわ。シングルとして売るわけないじゃないのよ!!」
亜希「何だー!! 安心したー!!」
依澄「でも新曲の1曲だけだってー。それ以外はウチがセンターなのは変わらないから!!」
桜「依澄。アンタ、意外とセンターへのプライドあったのね」
依澄「い、一応は・・・笑」
ミドルの机の周りで6人はそんな話をしていて話の輪に入りづらかった翔士は、その場から少し離れたところで話が一旦落ち着くのを待っていた。
ミドル「あら翔士くん。来てくれたのね!! 突然呼び出してごめんね!!」
しばらくして翔士に気づいたミドルは、翔士の元へと歩いていった。
翔士「お話とは・・・何でしょう?」
メンバーの5人は全員翔士を見つめていた。何かが怪しい。やはり桜がこの前の事件をチクって・・・そう思った時だった。
ミドル「テレビからの取材依頼が来ているわ!! 翔士くんに!!」
翔士「へっっ???」
予想にもしていなかったミドルの言葉に、翔士はただ目が点になるだけだった・・・。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
アナウンサー「さぁやって来ました!! この教室1年4組は、あの天才と言われているアイドルグループの楽曲全てを作詞作曲している東海林翔士くんが在籍しているクラスです!!」
カメラマンは1-4と書かれた教室の札を映していた。
アナウンサー「それでは突撃しましょう!! 翔士くーーーん!!」
ガラガラーーーと教室の扉の開く音が聞こえてきた。その瞬間、クラス内は歓声に包まれるのだった。
女子生徒A「キャーーーーー!!」
男子生徒A「菅野アナだーーー!!」
女子生徒B「可愛いーーーーー!!」
男子生徒B「本物だ!! すげーーーーーーー!!」
アナウンサー「東海林翔士くんは、どこですかーー?」
クラスのみんなは全員翔士の方を向いた。
翔士「あっ///はい。こっちです・・・///」
顔を真っ赤にして恥ずかしそうにして手をあげる翔士。カメラを向けられると、さらに顔は赤くなっていった。
アナウンサー「アナウンサーの菅野ひかりです!! 今回はよろしくお願いしまーす!!」
翔士「あっ///はい。よ、よろしくお願いします!!」
タジタジの翔士を見てクラスは大爆笑。担任の先生も笑っていたのだった。その後も放課後まで取材班は翔士を密着し、取材はなんとかラストスパートにまで進んでいった。
アナウンサー「それでは翔士くん!! これからの目標をお願いします!!」
翔士「はい。とにかく今はやっとメジャーデビューしたばかりなので、Family First Sameの5人に合う音楽をひたすら模索しながら作っていきたいなと思っているだけです。今後の目標としては、そうですね・・・全国ツアーで福島に彼女たちを招待することですね!!」
今思いついた事を、前からずっと夢見ていたと言わんばかりに語り出した翔士。
アナウンサー「頑張ってください!! きっと福島の皆さんも応援してますよ!! それでは最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!!」
なんとか全ての日程を終えた翔士はクタクタだった。
翔士「クッソーー。眠い。取材がこんなに疲れるとは・・・これから曲作りなのに全然集中できないかも・・・」
ひとりごとを言いながら、翔士は1人で教室を出た。
男子生徒C「アイツが最近入学してきた翔士ってヤツか?」
男子生徒D「そう。東京のアイドルグループの楽曲提供してるんだってー。お前、中学同じだろ?なんか知らないのか?」
男子生徒E「知らねーよ。アイツ全然目立つようなヤツじゃなかったし・・・」
男子生徒C「どうせ売れないだろ。調べたけど、デビュー曲とか歌い出し「チーっす!!」だよ?ダサ過ぎw」
そんな会話が耳に入りながらも、翔士は階段を降りていった。
女子生徒C「ねぇねぇ!! あの子が取材来るほどの有名人?」
女子生徒D「多分そう!! 目立たないけど、よく見たらイケメンじゃない?」
女子生徒C「それ私も思ってたー!! 彼女とかいるのかなー?」
女子生徒E「どうせ東京のアイドルの子とこっそり付き合ってるんでしょ!! 私達なんて眼中にないわ!! ねぇ?くるみ!!」
くるみ「そ、そうだよねーアイツが彼女とか・・・笑」
女子生徒E「知ってるの?もしかして中学一緒?」
くるみ「いや、そういうわけじゃ・・・」
女子生徒C「今だけでしょチヤホヤされてるのも。そもそも売れてないアイドルだし、調べたけど黄色の人とかそんな可愛くないし色々微妙だった。何で取材来てんの?福島は報道するニュースがないの?」
くるみ「何が色々微妙だってー?黄色が可愛くないは置いといて、青色をディスったらぶん殴るからな!!」
女子生徒D「黄色は置いといていいんだw」
思いがけない形で目立ってしまった翔士の高校1年の春。次の日から登校する度に、同級生や上級生から視線を浴びるのか。そう考えると、取材なんて断るべきだったと彼は思い始めていた。
翔士「取材が来るなら全国ネットにしてくれよ!! 何で、何で福島ローカルなんだーーー!!」
視線が痛くなった翔士は逃げるように男子トイレに隠れ、1人になり大声でそう叫ぶのだった・・・。
〜つづく〜
次の話はこちら→第9話 おしっこの悩み~亜希の場合~
前回の話はこちら→第7話 おしっこの悩み~郷美の場合~
オススメ
ついつい女子高生の放尿音を盗み聞きしてしまったラーメン屋の店長
放尿音といえばこちらの作品。ラーメン屋で働いたら女の子の場合は顔面偏差値が5くらい上がると思うのは僕だけですか?
エッセイ部屋から抜粋。この話に登場する男の子は、割とガチでおしっこの性癖に目覚めた可能性高いです。
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