このページは長編小説2023年シリーズ『ラッパ水仙と性癖』の最終話(第10話)です。はじめから読みたい方はこちらからどうぞ→第1話 2人の関係
前回の話はこちら→第9話 新しいスタート
第1章 ご報告
齋藤「鈴木くん!! これやり直して‼」
鈴木「は、はぁ・・・」
齋藤「こことここ、あとここも全部ダメなんだけど?やる気あんのか?」
鈴木「す、すいません・・・」
齋藤「何回目だよマジで・・・まるで昔の俺みたいだな笑」
僕は齋藤雄介(さいとう ゆうすけ)。大学を卒業した後、地元の広告代理店に就職した6年目の27歳だ。僕がヘタレだったのは数年前までの話で、今では見違えるほど仕事が出来るようになっていた。
恐らく当時は仕事そのもののやる気がなかったのだろう。今では仕事の楽しさを知り、その仕事ぶりが上司にも認められ、今年度から営業部の主任を任されていた。
佐野「齋藤くん。今日は仕事残していいから、定時で上がりなよ‼」
齋藤「あっ佐野課長ありがとうございます。では、お言葉に甘えて・・・笑」
佐野「ではではみんな、お昼前に悪いけど、ちょっと1つお知らせがあるよー‼」
お昼休みに入る数分前、課長はオフィスにいる社員全員を僕の前に集めた。
佐野「ごめんごめん。朝礼の時は忙しくて言えなかったけど、皆さんにお知らせがあります。と言ってもみんな分かると思うけど・・・そうだな。齋藤くん本人の口から話してもらおうか」
齋藤「・・・はい。私事ですが、今年の夏に入籍させて頂きました。もう皆さんご存知の方もいると思いますが、明日に挙式をあげたあと、そのまま新婚旅行に行かせていただきます。しばらくお休みを頂きますが、よろしくお願いしますっ‼」
パチパチパチパチ〜〜〜
佐野「若手の社員は知らないと思いますが、齋藤くんのお相手の方は以前ウチで働いていた方でした。いつの間にか交際していたらしく、そしていつの間にかゴールインです。それもあんなにキレイな人と・・・俺は生涯独身まっしぐらだというのに・・・笑」
少し笑いが起こったオフィス内は、ほのぼのとした雰囲気だった。
男性社員「齋藤さん!! 遂に明日ですねっ!! 奥様のドレス姿を見るのも楽しみにしてますよっ!!」
女性社員「あの美緒ちゃんが齋藤くんと結婚するなんて、数年前までは全く想像つかなかったわ笑 というか、明後日は美緒ちゃんの誕生日じゃない?」
齋藤「よく覚えてますね。そうですよ笑」
女性社員「逆になんで誕生日に合わせなかったの?」
齋藤「誕生日に結婚式は、目立つから嫌なんだと笑 終わってから誕生日迎えたいって言ってましたねー笑」
数年前とは違い、僕は女性に対しても難なく会話が出来るようになっていた。僕の全てが好転したのは、美緒と付き合いだしてからだった。
「美緒に相応しい人になる」「美緒を守れるそんな男になりたい」漠然とした目標で時間もかかったが、やっと今ではある程度形になっているのではと、我ながら思っている。まぁまだまだ成長途中であることに変わりはないが・・・。
昼休みに入ったので、僕は美緒が作ってくれたお弁当を取り出した。彼女が作ってくれるお弁当は本当に美味しい。
明日からの挙式と新婚旅行が楽しみで仕方がないが、今日は昼休みを返上してでも、やらないといけないことが山ほどあった。僕は美緒の愛情いっぱいのお弁当を食べながら、早く帰るために作業に集中していた・・・。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
松田「おせーぞ!! お前らが遅れてきてどうすんだよ笑」
次の日、僕はスタッフにタキシードの着付けをされながら、松田と会話をしていた。時間に余裕を持ったつもりだったが、思った以上に入り時間ギリギリだった僕と美緒を、松田は笑いながら揶揄っていた。
彼は今年から別の事業所に異動となったが、その異動先で僕と同じように主任として頑張っているみたいだった。
数年前までは正直彼をよくは思っておらず、むしろどっちかといえば嫌いな位置にいたのだが、今ではすっかり僕と仲が良くなり、仕事終わりには待ち合わせをして他の社員も含めて飲みに行く機会も多くなっていた。元々友達がほとんどいない僕にとって、もはや彼は親友のような存在だった。
齋藤「楽しみすぎて、昨日俺も美緒も寝れなかったんだよー笑」
松田「何だよそれ。小学生の遠足じゃああるまいし笑」
齋藤「いや、でも割とそれに近いかも笑」
そんな会話の中、スタッフの大きな声がリハーサル前の式場に響いた。
スタッフ「新婦様の着付けが完了しましたーー!!」
思ったよりも早く終わった美緒の着付け。スタッフにドレスの裾を持ってもらいながら、美緒は僕の前に現れたのだった。
美緒「ど・・・どう?///」
彼女は照れながら僕を見つめていた。なんてキレイなんだろう・・・。真っ白なドレスは、美緒の美しさを更に引き立てていた。もう言葉にならないほど美しい・・・。
齋藤「キ、キレイだよ・・・とっても・・・/////」
僕は照れながら彼女にそう言った。彼女はそんな僕をみて「ホント?」と笑顔で照れながら返した。とても幸せな時間だ。
スタッフ「それでは準備が整ったのでリハーサルを始めます。父親役の松田様と新婦様はこちらへどうぞ!!」
松田さんがリハーサルにいるのも無理はない。幼い頃から父親がいない美緒の父親役として、彼は美緒と一緒にバージンロードを歩くのだ。
式の練習は思いのほか難しかった。スタッフが優しく説明してくれたおかげで一応頭には入ったが、果たしてこれが本番でも出来るだろうか? 一連の練習が終わり、僕は次第に緊張が高まっていった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
司会「それでは新郎の雄介さんの入場です!! 皆様、盛大な拍手でお出迎えくださいっ!!」
式の本番。司会のその言葉で、僕の目の前にあった大きな扉は開かれた。沢山の人が僕に向かって拍手を送っている。僕は正しく歩けているだろうか?笑 緊張しすぎて若干ぎこちなかっただろうが、なんとか神父の前まで歩くことが出来た。
司会「続いて新婦の美緒さんの入場です!! 皆様、どうぞ盛大な拍手でお出迎えくださいっ!!」
再度大きな扉が開いた。僕が後ろを振り向くと、美緒と松田さんがゆっくりとバージンロードを歩いている。式場はまた大きな拍手に包まれていた。
神父「新郎雄介は、妻である美緒さんを、健やかなる時も、病める時も、豊かな時も、貧しき時も、あなたを愛し、あなたをなぐさめ、命のある限り真心を尽くすことを誓いますか?」
齋藤「はい。誓います」
神父「新婦美緒は、夫である雄介さんを、健やかなる時も、病める時も、豊かな時も、貧しき時も、あなたを愛し、あなたをなぐさめ、命のある限り真心を尽くすことを誓いますか?」
美緒「はい。誓います」
神父「皆さん、お二人の上に神の祝福を願い、このお二人を神が深く守り、助けてくださるよう祈りましょう!!」
僕は美緒のドレスのベールをあげた。そして優しく美緒の唇にキスをした。
パチパチパチパチ〜〜〜
式場の拍手はピークに達した・・・。
次ページ 第2章 美緒の異変↓
コメント