橘「齋藤くん、これやり直してっ!!」
齋藤「は、はぁ・・・」
橘「こことここ!! あとここも全部ダメなんだけど?やる気あんの?」
齋藤「す、すいません・・・」
橘「もう何度目なの?いい加減これくらい覚えてちょうだい!!」
齋藤「すいません・・・」
僕は齋藤 雄介(さいとう ゆうすけ)。大学を卒業後、地元の広告代理店に就職した23歳の2年目の会社員で、いつも直属の上司である橘 美緒(たちばな みお)に怒られてばかりの毎日だった。
彼女は僕が配属されている営業部の主任を任されているバリバリのキャリアウーマンで、誰もが見惚れる圧倒的な美貌とは裏腹に発言などが厳しく、部下からはとても怖いと恐れられているほどだった。
まだ26歳の彼女は完全に会社の出世コースにのっていて、もう数年後には課長クラスにでもなってんじゃないかと思うほど。そんな彼女に対して密かに思いを寄せている僕は、本人にはもちろん、誰にも打ち明けられないままの毎日を過ごしていた。
誰にも打ち明けられないのは彼女に好意を寄せていることの他にももう一つあった。それは僕が、女性のおしっこを我慢する姿を見るのが好きという特殊な性癖があることだ。
こっちの方こそもちろん誰にも言えないし、このことを気にしすぎるあまり、女性との会話すらままならず、恥ずかしながら一度も女性と交際した経験がない(まぁ、女性との会話が成り立たないのは、性癖のせいじゃない事は確かなのだが笑)。
しかしそんな僕でもある日、物凄い転機が訪れた。その日はとても仕事が溜まっていて、夜遅くまで残業していた金曜日の夜だった。会社には僕と同僚の男性社員が数人が残っていて、さすがに疲れが限界に迫っていた僕は、そろそろかと帰る準備をはじめていた。
すると何やらオフィスの外からコツコツと、ヒールのような足音が近づいてきているのが分かった。
齋藤(誰だ?女の人?)
そう思った瞬間、オフィスの入り口のドアが開いた。するとそこにいたのは私服姿の橘さんだった。
橘「良かった良かったーーーーたまたま開いてて!! 忘れ物しちゃったから、ちょっと取りに来たの!! お仕事中ごめんねー?」
彼女はそう言って自分の席の引き出しを開けると、すぐに部屋を出ようとしていた。すると1人の同僚である松田が話しかける。
松田「橘さん飲み屋とか行ってたんですかーーー?ちょっと顔赤いですよーーー?」
橘「えーーっ?プライベートな質問よーー?秘密ーーー!!笑」
彼女は持っていたファイルをカバンに入れてオフィスを出て行こうとしていた。
橘「いくら明日が休みだからって、働きすぎもダメよ?もう23時だし、そろそろみんな帰ったら?終電無くなちゃうよーー?」
彼女はそう言い残してオフィスを後にした。何気に彼女の私服姿を見るのは初めてだった。やはりイメージ通りのクール系のオシャレコーデで、本当によく似合っていた。
先ほど橘さんと話していた松田も、彼女のことが好きそうに見えた。彼女もなんか彼には心を開いているようにも見え、僕はそんな松田の絡みに、自分は後輩ながらも以前から嫉妬していた。
もちろんその松田と橘さんが付き合っているのかは分からない。でもさっきの会話からして付き合っていることはないだろう。もしかしたら彼女には他に彼氏がいるのかもしれない。いや、あんなにキレイなのだから確実にいるだろう・・・。
そう思いながら僕は帰る支度が整ったので、橘さんを追いかけるようにオフィスを出ていった。元々本当に会社を出るつもりだったが、まさかこのタイミングで彼女が会社に来るなんて・・・。
少しでも彼女を見たい僕は、彼女と同じエレベーターに乗るため、少し急ぎ足で廊下に出た。オフィスを出るとそこにはエレベーターを待っている彼女の姿はなかった。エレベーターは僕がいる10階には程遠い「1F」と表示されていて、完全に彼女の行方が分からなくなっていた。
齋藤(あんな一瞬で?いやそんなはずはない・・・)
辺りを見渡すと、なんと暗い廊下の途中にある女子トイレの電気が点いていた。これは絶好のチャンスだった。
齋藤(橘さんが・・・トイレにっ!!)
僕は興奮しながらも、忍び足で女子トイレの入り口に耳を澄ました。僕は彼女の放尿を今か今かと待っていたが、トイレからはしばらく無音状態が続いていた。
「ガチャッッ!!」
耳を澄ましていたせいかドアを開ける音がとても大きく聞こえた。それも、松田がオフィスから出ていくドアの音だ。
女子トイレの中にいる橘さん。そして僕はそのトイレのドアの前に立っている。明らかに不自然だ。なんて言い訳をすれば良い?何て言えば回避できる?僕は頭の中が真っ白になりそうだった。松田は不思議そうな顔で僕の方に近づいてくる。ヤバい!! どうすれば・・・
松田「おっ?齋藤。お前、エレベーターのボタン押してないのか?」
齋藤「あっ!! すいませんっ!!」
聞かれた内容は予想外だったがこれもまたピンチ。エレベーターのボタンを押さずに何をしているんだ僕は。僕はない頭をフル稼働させ、必死に言い訳を思いついた。
齋藤「ここでちょっとここでコケてしまって、イタタタ・・・膝が・・・」
我ながらファインプレーだと思った笑。こんな融通の効く言い訳を考える頭があるのなら、仕事に活かせよと思った笑。しかし、それにしても演技が下手くそすぎだ。笑
松田「何で?こんな何もないところで?笑」
松田と会話をしていると、女子トイレの向こうから何やら音が聞こえてきた。
「シューーーーーーーッッッッ!!」
それは間違いなく橘さんの放尿音だった。信じられない。橘さんの放尿音をこの耳で聞けるなんて・・・!!
僕は人生で経験したことのないような興奮を感じていた。女性のおしっこの音すら生で聞くのは初めてだった。今まで何度か聞く機会はあったが、音消しがあるせいで全滅だったからだ。
本当は耳を凝らして、トイレのドアに耳を当てて土下座をしながらでも聞きたい。しかし状況が状況だった。
松田「大丈夫か?笑 お前って本当ドジだよなwww まぁボタンは俺が押してやるよ笑」
少し馬鹿にされながらだったが、彼には放尿音を聞こうとしていたのがバレていない様子だった。もうそれだけで十分だ。いくら馬鹿にされようと、盗み聞きがバレなければそんなことはどうでも良い。
「シューーーーーーーッッッッッ!!」
長い。それにしても橘さんのおしっこが長すぎる。しかも勢いも強く、なんでこんな絶好なチャンスの時に、松田と話さないといけないんだと彼が心底邪魔で仕方がなかった。僕は松田と自然な会話をしながらも、必死に橘さんの放尿音に耳を傾けていた。
それにしても明らかに彼にも聞こえているであろう彼女の放尿音。彼はこの音が聞こえていないのか?仮に聞こえていたとして、この音が何の音か理解しているのか?この音を聞いて彼は何とも思わないのか?そんな僕を小馬鹿にするような彼の態度も、あくまで通常運転のようだった。
松田「でー終わったの?仕事。俺はまだ残ってるけどさーー。さすがにもうやってらんねーって帰ることにしたわw 続きは週明けだなw」
齋藤「僕もです、ちょっと仕事量が多すぎて、流石に疲れちゃって・・・」
そんなどうでもいい会話をしていると、気つけばトイレの流れる音が聞こえていた。
ジャーーーーーーーーッッッッッ!! ガチャッッ!!
トイレの個室から出る音が、女子トイレから聞こえてきた。
僕は松田とエレベーターの前でどうってことない会話を続けていた。彼が来なければ放尿音もちゃんと聞けただろう。そして橘さんとエレベーターで2人きりになれたのに・・・。
悔しくて悔しくて堪らなかったがどうすることも出来なかった。僕はただただ松田を恨んでいた。もちろん彼に何も悪気がないのは理解しているが・・・。
チーーーン
エレベーターが10階に着いた。エレベーターが開くと同時に橘さんがトイレから出てきた。彼女が最初に発した言葉はこうだった。
橘「あんた達、うるさすぎ笑」
トイレを出る前から僕たちの会話が聞こえていたようだ。まぁ当然と言えば当然か。むしろ聞こえてなかった方が違和感があるくらいだ。
橘「ちょうど良いタイミングでエレベーター来たじゃん!! ラッキー!!」
彼女は明るく笑顔で僕と松田が乗ったエレベーターに乗り込んできた。やっぱり彼女は松田の前だと異様に明るく振る舞っている様にも見える。これはなんだ?もしかして橘さんって松田が好きなのか?いや、結構良い感じなのか?何ならもう・・・付き合っているのか???
そう思いながらも、1階に着いたエレベーターはチーンと音を鳴らして扉を開いた。
帰り道は3人ともバラバラだ。しかし駅まで橘さんと一緒だった僕は、どうにか少しでも会話をしながら帰れないかと考えていた。彼女は何も言わず、ただ僕の横について歩いていた。彼女は何のつもりで僕とそんなに距離を詰めて歩いているのだろう?他にも色々と聞きたいことが山ほどあった。
さっきも少し触れたが、僕は女性と話すことが苦手だ。ましてや普段から彼女に怒られることが多かった僕は、彼女に自分から話しかける事などとても出来なかった。しかし、意外にも口を開いたのは彼女の方だった。
橘「齋藤くんも、箱牧線?」
帰り道についてだった。僕はどう答えようか頭の中がパニックになった。
齋藤「あっっえっと、在来線・・・箱牧線ではなくて、でも何というか・・・」
しどろもどろの答えになってしまった。自分でも何を言っているのか分からない。
橘「どーゆーーこと?笑 とりあえず電車乗るんでしょ?笑」
彼女と僕は駅へ向かって歩いていた。そしてまたしばらく無言が続いた。話せない、でも話したい。頭の中でずっとグルグルとそんなことばかり考えていた。何でこんなに何も出来ないんだろう?憧れている年上の女性と一緒に歩いて帰っている。こんなチャンスを生かせないそんな自分が嫌だった。
橘「何か聞きたそうだけど、なんか言いたいことあるの?」
するとなんと、彼女の方から思いもよらない牽制球を食らってしまった。
齋藤「あっいや・・・あの、別に・・・」
怯んだ僕は尚更何も言えなくなっていた。何で僕はいつもこんな感じなんだろう?何でこんなに女性と話せないんだろう?そんな自分自身にイライラし始めていた。
橘「何でそんなに怯えているの?私、ウジウジしている人嫌いなんだけどっ?」
ヤバい。これはヤバい。もうどうしようもない。ただただ頭の中が真っ白になった。結局何も答えられないまま、僕はまた無言を貫いてしまっていた。しかしこれまた彼女からの質問で、2人の沈黙は破られたのだった。
橘「私と松田くんの関係が知りたいの?」
彼女は僕の心が読めるのか?僕は自分でも驚くくらい、そこは素直に返事が出来た。
齋藤「・・・はい」
終電まで残り数本。僕と橘さんは歩道脇にある地下鉄の入り口の階段を静かに降りていった・・・。
〜つづく〜
次の話はこちら→第2話 近づきつつある距離
オススメ
ついつい女子高生の放尿音を盗み聞きしてしまったラーメン屋の店長
女子高生の放尿音を盗み聞きしたラーメン屋の店長。爆尿かつ大量のおしっこを、小柄な可愛い女の子がぶちまけるお話です。
エレベーターに閉じ込められるベタなお話。この話のモデルとなった場所をXのDMで教えてくれれば、地味にプレゼントをあげる事にしています。正解したらね?笑
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