第1章 予兆
自分自身が普通の人と違うかもしれないと思い始めたのは、幼稚園の頃まで遡ります。ある日の週末の朝、僕は寝ている状態のまま、父親に抱えられてテレビの前のソファに連れて行かれました。ちょうど戦隊モノの番組が始まる頃です。
父「〇〇レンジャー始まるぞ!! 面白いぞ!! 寝てないでお父さんと一緒に観ようよ!!」
幼稚園児だった息子に、戦隊モノの楽しさを伝えたかったのでしょう。父親は毎週毎週、何度も僕を起こしました。しかし僕はそんなのに全く興味がなく、そんな事で起こされるのはストレスでしかありません。
僕「嫌だ寝る。こんなの好きじゃない!!」
そう言ってソファで寝てしまうのが、僕の日曜日朝のルーティンでした。しかし今日の父親は思いのほかしつこくて、この日はしょうがなく一緒に観ることになったんです。
しかし興味が無いからなのか、僕は何度観ても内容がほとんど分かりませんでした。途中から観たというのもあるかもしれませんが、キャラクターや物語の意味などが分からず、同じ事を何度も何度も父親に質問していると、最終的にこんな事を言われてしまいました。
父「お前本当に観ているのか? ボーっとしているだけで観ていないだろう?」
ここで父親は観念したのか、次の週末から僕を朝に起こしに来ることはなくなりました。
もちろん父親に諦めてもらうようにわざとやった訳ではなく、僕はちゃんと真面目に観ていました。しかし内容が全く入ってこなかったし、何が面白いのかが分かりませんでした。
僕(なんでこんなつまらないものを、お父さんは勧めてきたんだろう?)
当時から僕はそんな事を思っていました。
僕は幼稚園に入園する前から日本地図や世界地図が大好きで、普通の男の子とはちょっと違っていました。6歳で47都道府県や県庁所在地はもちろん、世界の国、国旗、首都や人口、通貨などを全て暗記するほどだったんです。
母「ウチの子は天才よっ!! まだ6歳なのに、もう私にも聞いたことない国の首都とかが分かるの!!」
母親はそんな事を近所のママ友に自慢気に話していた事もありました。しかし僕は自分で気づいていました。天才とかそういうのじゃなくて、興味がある事とない事での知識の吸収力が全然違うという事に。
男の子「俺、仮面ライダー〇〇!! お前は?」
男の子「俺は〇〇レンジャーだぁ!!」
幼稚園では男の子や女の子がみんな元気に走り回っていました。みんな僕の知らない遊びをしていたんです。そしてそれの何が楽しいのか、全く分かりませんでした。
先生「下腹部くんはみんなと遊ばないの?」
幼稚園の先生が、いつも部屋で一人の僕を心配そうにしながら話しかける時もありました。僕は適当に誤魔化していたと思いますが、そんな面白くない事までしてなんで友達と遊ばないといけないの?という気持ちが本音だったんです。
僕の幼稚園の過ごし方はいつも1人で画用紙を使い、世界地図や日本地図を書いたり、色んな国、都道府県の人口や特産品などを書きまくっていました。
先生「これ、下腹部くんが書いたの?」
先生はとても驚いていました。その先生は園長先生や僕の親などにもその時に書いた僕の地図などを見せたりしていたんです。
園長「幼稚園生とはとても思えません!! 凄いわっ!!」
そんな感激する大人達とは対照的に、僕は薄々不安を感じていました。
僕(小学生になっても、友達は出来ないだろうなーー)
他の人が興味のある事に興味がなく、他の人に興味のない事に興味がある。この特徴のおかげで、僕の小学校時代は壮絶なものになってしまいました。
第2章 クラス替え
小学3年生に進級したての4月。僕はA君とB君と初めて同じクラスになり、積極的に話しかけられました。
A君「今日の放課後よぉーー? 下腹部ん家で遊びたいんだけど良いかーー?」
僕「うん!! いいよ!!」
B君「お前ん家かー。初めてだし楽しみだなぁーー!!」
僕は2年生まで仲の良かったH君とクラスが離れ離れになり、とても不安だったのですが、積極的な2人のおかげで無事に友達が出来たと思って安心していました。その日の放課後、僕もウキウキでA君B君を家に招待したんです。
母「あら新しいお友達??」
僕「うん!! A君とB君だよ!!」
A君&B君「初めまして!! お邪魔しまーす!!」
母「あら良い子っ!! よろしくねーーーー!!」
そんな感じの軽い会話をして、僕はA君とB君を自分の部屋に案内しました。しかし僕の部屋を見た彼ら2人のリアクションは意外なものだったんです。
A君「えっっ・・・お前の部屋、何もないな」
B君「何かゲームとかないのぉーー?」
当時の僕の部屋は、辺り一面に日本やら世界やらの地図ばかりで、男子小学生が喜ぶような漫画やゲーム機などは一切ありませんでした。
A君「つまんねー。B君!! 帰ろうぜーー!!」
B君「そうだなーー」
そう言って、そそくさと帰る2人を今でもハッキリと覚えています。僕にとって自分の部屋は何も無い訳ではなく、自分が好きな世界地図や地球儀など、むしろ好きなものしかない夢の空間でした。
2人には全く興味が無いんだと薄々分かってはいたものの、改めて自分に不安を覚える出来事でした。
母「どうしちゃったの??もう帰ったの?」
驚く母親と、自分を否定されたようで悲しみに明け暮れる僕の2人は、夕焼けの赤い太陽に照らされた玄関を見つめていました。
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あの出来事から数週間が経った頃、僕はA君とB君とは全く遊ばなくなり、友達が1人もいなくなってしまいました。それどころか、彼らにからかわれるようになってしまったんです。
A君「おい知ってるーー? コイツ漫画もゲームもアニメも何も知らねーぞっ!!笑」
Y君「マジでぇーー???ダッサーーー!!笑」
B君「ダセーーーよなっ!! 今日からお前も下腹部のことは無視だぞ?いいな?」
Y君「うん!!」
彼らの行動は日に日にエスカレートしていきました。毎日学校に通えば通うほど、自分がクラスから浮いていくのを、小学生ながらも感じていたんです。
僕(どうしよう・・・H君と遊ぶしかないよな・・・)
先ほども紹介したH君は、2年生まで僕と仲の良かった男の子でした。しかし3年生から彼とクラスが離れてしまったので、何度か一緒に遊ぼうと声をかけましたが、断られてしまったんです。
H君「ごめん・・・・」
今思えば、このH君の返事に少し違和感はありました。
僕(どうして断られるんだろう? 放課後ならクラスが別なのは関係ないのに・・・)
そうしてそのまま月日が流れていった小学4年生のある日、事件は起こりました。
第3章 エアガン
(※ここから非常にショッキングな表現が含まれているので、閲覧の際はご注意ください!!)
そんなこんなで僕は小学4年生になりました。不幸にもまたH君と違うクラスで、A君とB君とはまた同じクラスです。
この時の僕をいじめていた男子は全部で5人。A君とB君が主犯で、残りは違うクラスのY君、O君、I君でした。(この3人は3年生の時のクラスメイトです)
3年生の頃から始まっていた僕への無視などは相変わらずで、他には5人の帰宅のランドセル運びや、デコピンリンチなど、僕に対してやりたい放題でした
デコピンリンチというのは彼ら5人が、僕に対して漫画やアニメに関する問題を出し、それに答えられないと僕を3人で押さえつけて、残りの2人で僕のおでこを中心にデコピンを繰り返すと言うものでした。
僕は漫画やアニメ、ゲームには疎かったので、ほとんど答えることが出来なかったんです。1発くらいならそんなに痛くないのですが、これを何分もやられるのは本当に苦痛でした。もちろんおでこは真っ赤になりますし、翌日でも痛いことがあります。
しかし僕はこの事を、親や先生などに言うことは絶対にしませんでした。何故ならバラしたことが彼らにバレたら、きっと取り返しのつかない事になると考えていたからです。
真っ赤になったおでこは、前髪を垂らすことでバレるのを防いでいました。その為に髪を少し伸ばしていました。とにかくバレないように必死です。
彼らも先生にいじめがバレたらマズいと勘づいていたんでしょう。僕をいじめていた男子グループは、他の生徒(グループ外の男子や女子や先生)がいるときは、至って普通に僕と接していたんです。
この事に気づいた僕は、学校ではなるべく1人にならずに、僕へのいじめに加担していない男子生徒や女子生徒などと執拗に絡むことで、難を逃れていました。
しかしこの逃げ方を数ヶ月も繰り返していると、彼ら5人にもストレスが溜まったのか、ある日の放課後いつもの公園に呼ばれてしまったんです。
僕(ああーー。またあのデコピンかーーー。)
そう思いながら公園に着くと、彼ら5人が待っていました。
A君「おせーぞ!! 走って来いっ!!」
どうやらいつにも増して彼らは怒っているようだったんです。
B君「お前よ、いつも逃げんなよ?? 他の奴らと喋ってて楽しいか? お前は俺たちと友達じゃないのか?」
僕はコイツらと友達だなんて、微塵も思っていません。しかし何も言い返せない自分がいました。
A君「裏切り者だな。お前みたいなやつとは絶交だ」
僕はとても嫌な予感がしました。いつものようにY君、O君、I君3人が僕を押さえつけると、A君とB君はデコピンではなく、今回は僕を殴りまくったんです。
A君「今までの仕返しだっ!!」
そう言いながら僕を思う存分殴ったり蹴ったりしていました。人生で一番痛かった。骨は折れませんでしたが、血もちょっと出て、全身傷だらけになりました。
しかし、本当に辛いのはここからでした。
B君は自分のランドセルを両手で探ると、エアガン(空気銃)を取り出しました。そしてそのエアガンは、どこかで見たことある気がしたんです。
B君「今日はこれをお前に撃つ!!」
そう言われた時に気づきました。このエアガンはあのH君の物だったんです。2年生まで僕と仲の良かったH君。彼には5歳年上の兄がいました。兄はエアガンが好きで、彼の家には沢山のエアガンがあったんです。
そしてH君は、両親には内緒で兄から1つお気に入りのエアガンを貰っていて、いつもそのエアガンを僕に自慢していたんです。
H君「いいだろーーー?? お兄ちゃんから貰ったんだーー!!」
僕「凄いねーーー!!」
僕はそうやってリアクションをしていましたが、内心怖いもの触るなーと思っていました。
そんな過去があったものの、今何故、そのエアガンをB君が持っているのか不思議でなりませんでした。するとB君の口から、信じられない言葉が飛び出してきたんです。
B君「Hから預かったんだよねーーー。これをお前に撃てって笑」
僕は耳を疑いました。何故H君が?? 僕は彼に何かしたのか? なんでそんなことをするの??
「バンッ!!」
エアガンの銃声が聞こえてきました。その弾丸は僕の左の眼球にダイレクトに当たったんです。頭の中で色んな感情、思考が混ざり合って、僕は目の前が真っ白になりました。
5人「アヒャヒャヒャーーー!!」
そんな僕とは対照的に彼ら5人は笑い転げていました。
僕は恐怖で震えていました。そう、目の前が真っ白なのは比喩表現ではなく、本当に左目が真っ白になって見えないんです。
右目を閉じ、左目だけを見たら視界は完全に真っ白。僕は痛さと恐怖で泣いてしまい、見える右目だけを頼りに、走って家に帰りました。
この頃には僕の両親は別居していて、母親はパートに出かけていました。姉は友人宅に遊びに行っているようで、家には誰もいません。
僕はどうする事も出来ず、真っ白になって見えない左目を開けながら目の前で自分の手を振り何度も見えないか確認していました。しかし何度やっても視界は真っ白で何も見えないんです。
僕「うーーーーっ。目が見えないーーーっ!! ぐすんっ」
僕は1人、家で叫びながら泣き崩れていました・・・。
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